謝った位じゃ許さない |
10/12のアニズマにたぎった小話。 月山国光と雷門の試合。 風変わりなスタジアムの観客席から篤志を見ていた。 前半で倉間が飛んだときは笑った。あの子見た目も小さいが体重も軽いらしい。いい吹き飛びっぷりだった。 竜巻が出るのも変だけど、向こうの監督の格好もそうとう変だ。 篤志もなんか膝ついちゃって、まぁ。 ああ、馬鹿だなぁ。 本当にかっこつけなんだから。 篤志は器用で割と何でもできるし、サッカーのセンスがあるのも本当。 でもそれ以上に努力している癖に、決してそれを見せない。 勉強でもサッカーでも何でもそう。だから、周りに弱音を吐くことをしない。 すればよかったのに。 三国や車田たちはきっと馬鹿にしない。 言わなくちゃ伝わらないことだってあるのに。 『月山国光に行く。・・・ごんべ、来るか』 他に誰もいない夕暮れの教室で、グラウンドを見下ろしながら篤志が言った。 そこにサッカー部の姿はない。なんでも最近は河川敷でやることもあるんだとか。 誰もいないフィールドを、なんて目で見てんの、あんた。 『・・・行かない』 『そうか』 そうか、じゃないでしょ。来るか、じゃないでしょ。 言いなさいよ。一緒に来いって。どうしてそんなにプライドばっかり高いのよ。 わたしはあんたの彼女でしょ?弱いところくらい見せてよ。こんな時くらい頼ってよ。余計なことは言うくせに、肝心なことは言わないなんて。 『馬鹿篤志』 「本当、馬鹿」 転校してまだ日も浅いのに、独特なくせに異様に規則正しい月山国光の動きに完全に付いていっている。 多少実力や実績があったとしても、転校してすぐにエースナンバーなんて普通考えられない。だって月山国光自体強豪校なのだ。 努力したに決まってる。 どうせまた見えないところで死ぬ気で練習したに決まっている。 そんなに頑張れるのに、サッカーは内申の為なんて自分に言い訳して。 本当はサッカーが好きで好きで堪らない癖に。 好きじゃなきゃ、ここまで出来るわけないじゃない。 「頑張れ、三国。頑張って、雷門」 わたしはどう頑張ってもあのフィールドに立てないから、どうかあの馬鹿の目を覚まさせてやって。 試合が終わったら。 わたしが篤志の頬を叩いて、頭を押さえつけて謝らせるから。 だから。 「・・・頑張んなさいよ、馬鹿篤志」 わたしを泣かせた責任、取って貰うんだから。 2011.10.12 |