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彼はお空の星になったのよ

不覚だった。

どうしてこんな風の強い日に限って、制服でマネージャー業務なんてしてしまったのだろう。


「へぇ、なかなか色っぽいの履いてるじゃんか、ごんべチャンよぉ」
「うっさい変態!」
「ぶっ」


腕組みをしてにやにや笑う不動に手に持っていた洗濯物を投げつけて、今度こそスカートが捲れたりしないように気を付けながらその場から逃げ出した。



逃げたしたのはいいものの、結局いつかは顔を合わせなければいけないわけで、その日の昼食。



「よ、ごんべチャン一緒に食おうぜ」



いつもは一人で食べる癖に、と睨み付けてもどこ吹く風。
いやに上機嫌にわたしの前に陣取った不動に、周りがざわつく。



「さっきは逃げられちまったからなー、じっくり話そうぜ」
「あんたと話すことなんてないわよ」
「んな事言うなよ、下着見た仲だっていうのによ」
「なっ、不どー・・・」



「なんだと!?」



なんの躊躇もなく暴露され羞恥に顔が熱くなる。思わず立ち上がって声を荒げるが、それよりも大きな声にかき消されてしまった。



「おーおー、どうしたよ鬼道チャン?」
「貴様、さっき何と言った!」
「だから、下着見た仲って言ったんだよ。なーごんべチャン?」
「ちょっ・・・!」



二回目にもう言葉が出てこない。

ここは食堂で選手もマネージャーたちもみんないるのに、どうしてこんな恥ずかしい思いをしなくちゃならないのか。

それもこれも不動に下着を見られてしまったのがいけないのだけれど。



「何色だった!」
「・・・あん?」



怒りと羞恥に震える耳におかしな言葉が聞こえた気がする。



「くっ、ごんべ!オレにも見せるんだ!」
「おいおい、まじかよ・・・」
「不動に見せてオレには見せられないと言うのか!?」



気のせい気のせい・・・じゃない。
そんな、馬鹿な。



「さすがに引くぜ鬼道・・・」



まさか不動がまともに見えるなんて。



「これは幻だ」「・・・オレ、疲れてんだな」「マネージャー、目薬あるか」



おいみんな現実を見ろ。むしろわたしが一番現実逃避したい。



「さあごんべ、見せてみろ。人前が恥ずかしいなら部屋へ行こう」
「いや行かないから」
「なぜだ!?」
「いやなぜもないから」



そんな鬼のような形相で肩を揺すられても困る。
ていうかもうお願いだから夢だったと言ってくださいお願いします。


「ならば・・・実力行使しかないな。覚悟しろごんべ!」
「不動、鬼道にジャッジスルー!」
「ジャッジスルー2改!」


鼻息荒くゴーグルを反射させて飛びかかってきた鬼道は、不動の見事な反則技で宿舎の窓から吹っ飛んでいった。



「悪かったな・・・」
「いや、わたしがスカートのままやってたからいけなかったんだよ」
「ああいうのもいるらしいから、気ぃつけろよ」
「不動・・・」


ぶっきらぼうに言い放つ不動に、胸の奥がきゅんとした。
なんだろう、不動、こんなに格好よかったんだ・・・。なんで今まで気づかなかったんだろう。


「とりあえず、飯食え。終わったら洗濯物取り込むの、付き合ってやっから」
「う、うん・・・。ありがと、ね」
「・・・おう」





そしてこの件をきっかけに不動は勇者と認識され、イナズマジャパンに受け入れられることとなる。






(お兄ちゃん・・・)
(あのね春奈ちゃん・・・)




彼はお空の星になったのよ