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少年Hの証言

これから話すことは・・・嘘でも何でもない・・・オレが見た真実だ・・・。



あのな・・・、豪炎寺が・・・乙女だったんだ・・・。



何を言ってんのかわかんねーと思うけど、オレもよくわからないんだ・・・。


今朝、オレは昨日持ち帰るのを忘れた課題を、朝練前にやろうといつもより早く教室に行ったんだ。


そうしたら先客がいた。
それが豪炎寺だ。


そしてオレは・・・見たんだ!




頬を赤く染めて・・・名無しの机の中に、クッキーを入れてる豪炎寺を・・・!



あれはおそらく、手作りだと思う。ラッピングがピンクとオレンジのリボンで、凄い手が込んでたんだ・・・。


あいつ、料理だけじゃなくお菓子もつくれるんだな・・・。



あまりの光景に、オレはつい、鞄を落としてしまった。

当然豪炎寺は気づくだろう?


「はんっだ・・・」
「(噛んだ・・・)よ、よう豪炎寺。早いな」


オレはとりあえず、全てをスルーすることにした。
いや、多分そうしないと頭がどうにかなりそうだったんだろう。

「・・・見たか?」


だが豪炎寺はオレの必死のスルーを無駄にしたんだ。
目尻を赤くして斜め下を見てもじもじする豪炎寺を前に、オレは現実を直視するしかなかった。


「あー。おう」
「・・・・・・」
「そ、そこって確か名無しの席だろ?おまえら知り合いだったんだな」


そこで豪炎寺が頷けば、そうか知り合いだからクッキー渡すんだなあははという流れになるはずだった。

無理矢理すぎる?

・・・他にどうしろってんだよ!


だが豪炎寺はオレの絶妙なパスを取りこぼしたんだ。


「いや・・・名無しさんはオレのことなんて覚えていないだろう」

「話したのは一度だけ、転校初日に迷子になったオレを助けてくれた」

「その時から、オレは・・・」



なんだろうな、オレ、味方にキラースライド喰らわされた気分になった。ていうかおまえ迷子とかやめてくれ、クール設定はどこ行った。


その先は覚えていない。いやオレは何も聞かなかった。とにかく「そうか頑張れよはははははは」とだけ行って逃げ出してきたんだ。危なかった。あのままあそこにいたらオレはもうオレのままじゃいられなかったと思う。




どう思う?マックス。



「どうも何も、有名だよね。豪炎寺が名無しさんに片思いしてんの」


なん・・・だと・・・・・・・・・!?


「名無しさんを遠目に見つめては赤くなって、物憂げな溜め息をするって女子たちが騒いでた」


・・・・・・・・・・・・・・・・。


「お菓子だけじゃなくて刺繍入りのタオルとかもこっそり差し入れしてるらしいよ」




なあ、マックス。世の中知らない方が幸せなことって・・・あるよな。


オレ、勉強になったよ。