壱万打御礼企画 | ナノ
「風丸とくっついたIF」


まさかわたしが誰かとお付き合いをする日が来るなんて、考えてもいなかった。

いや、もしそんな時が来るとしてもそれは年上相手だとばかり思っていた。
なんと言っても前世からの年齢を数えれば仕方ない。
下手をすれば犯罪な年の差になるかもしれない、なんて悲しい予想を立てていたのだが。




・・・まさか弟のように可愛がっていた一郎太と恋人同士になろうとは。



きちんと恋人になるまでにまぁ色々と、本当に色々とあったわけだけれど、今は割愛して。


一郎太もまたわたしのことは姉のように思って接しているか、世話焼きなただの幼なじみ程度の認識だと思っていた。


それが結構以前からそういう対象として好かれていたと知った時には驚いたし、気付けばわたしも好きになってしまっていたのにも驚いた。





とはいえ幼なじみとして付き合いは長いし、家もご近所さんなので登下校も一緒、さらには部活も一緒。
付き合ったからといって特に変わりはなかった。


強いて上げるのなら・・・。



「今日も疲れたなーっ。よし、ごんべ、風丸。帰ろうぜ!」
「円堂!一緒に雷雷軒寄っていこうぜ」
「へ?半田と昨日も行っただろ?」
「あー、ほら。今日壁山が頑張ってたからさ、ご褒美も必要だろ!?」
「キャ、キャプテンも一緒に行くッス!」
「そうだな!じゃあごんべたちも・・・」
「あー腹減ったなよっしとっとと行くぞ円堂!」
「うおっ染岡!?」



下校の際は半田たちが気を使ったらしく、二人で帰れるようにと守を引っ張って別の道で帰るようになったくらいか。




そうして周囲の協力により二人で帰るようになったのは最近のことだが、その頃から一郎太の様子がおかしくなった。


話しかけると肩が跳ね、こちらまで緊張しているのが伝わってくる。


そしてちらちらとこちらを見ては何か言いたそうに口を開き、結局口の中でもごもごして終わってしまう。



・・・正直、一郎太が何をしたいのかは分かっている。
先日偶然手が触れたときの反応から見て、まず間違いないだろう。


現に一郎太の手は時折こちらに伸び、しかしあと少しで触れ合うというところで弾かれたように戻ってしまう。



「・・・ねぇ、一郎太」
「っ!な、なんだごんべ」



手、繋ぐ?


見ていて可哀相なくらい頑張っている一郎太に、いっそそう言ってしまいたくなる。


とはいえわたしから言い出していいものか。


何故か男らしさに拘る一郎太だからこそ、わたしから言うとプライドが傷ついてしまうかもしれない。



「・・・えーと、今日おにぎりたくさん食べてたけど、お腹空いてたの?」
「ん、ああ。その、ごんべが作ったやつ、美味かったぜ」
「ありがとう。でもよくわかったね、見た目みんな同じで纏めてあったのに」
「何度も食べてるからな。それに・・・ごんべのならわかる」
「・・・ありがとう」




どうしよう。言ってることは本当に男前で格好いいのだけれど、それを言ってる本人の顔が真っ赤な上、視線が斜め上に泳いでいる。


それでも本人が精一杯言っているのはわかるし、そう言われて嬉しくないわけがない。




それから他愛のないことを話しながらゆっくりと家路を辿る。
だが家が近づくにつれ一郎太の口数が減り、生返事が増えてくる。


さあ、どうするの一郎太。
今日もこのままお別れコースか、と思われたその時。


ついに一郎太が動いた。



「・・・っ!」
「!」



握っては開いていた手が、ふいにわたしの手に触れた瞬間。そのままぎゅっと包み込まれた。





「・・・・・・嫌、か?」



恥ずかしいのだろう、顔を反対に捻り表情を隠した一郎太。・・・髪を縛っているせいで丸見えの耳は真っ赤なのだが、多分それはわたしも同じことだろう。



「・・・嫌じゃないよ」



さっきまでは余裕を持って観察していられたのに、もはやそんなものは吹っ飛んでしまった。


女の子みたいに可愛らしくて、泣き虫で小さかった一郎太。
その彼の手が、こんなにも大きくなっていた。



少しかさついた、運動をしているせいで体温の高い手がわたしの手をすっぽりと包み込む。



「・・・その、もうすぐ家だけど」
「・・・うん」
「・・・少し、寄り道していってもいいか」




気付けば一郎太の緊張は繋いだ手を通して伝染したらしい。


熱を冷ますため空いた手で顔を仰ぎ、声が震えたりしないように慎重に、了承の意を伝えた。







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もしも風丸オチだったら、でした!あくまでIFですので!リクエストありがとうございました!手を繋ぐとか初歩的ですみません…!
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