壱万打御礼企画 | ナノ
「カノン絡みでヒロイン未来誰と結婚するのか憶測し合い水面下で牽制し合う一同の話」




雷門中に遊びに来た守の曾孫、カノンくん。
守に似ていて真っ直ぐで、どこか抜けているようなカノンくんと守が並ぶとまるで兄弟のようでとても可愛らしい。


「しまった、オレ、友達待たせてたんだった!ごめん、今日はもう帰るね!」
「おう、また来いよカノン!」


そして急に来て急に帰るあたり、守の血を感じさせる。



カノンくんがインカムに向かって何やら声をかけると、光の柱が現れる。



「またおいでね、カノンくん」


光の中に向かうカノンくんに声を掛けると、カノンくんはにっかり笑った。


「またねごんべさん!オレが待たせてる友達、ごんべさんの曾孫で幼なじみなんだ!」
「わたしの曾孫?」
「うん。足が速くて、頭が良くて、強力なシュート打つすげー奴なんだ!じゃあね!」



カノンくんはわたしの曾孫と友人なのだと言った。
まさか曾孫同士も幼なじみだなんて驚きだが、それほど長く守と共にいられるということは、素直に嬉しい。

カノンくんの口振りからするととても仲が良いようだ。
まるで自分のことのように自慢をしたカノンくんは、大きく手を振り光の中に消えていった。



・・・わたしの知らないところに爆弾を落として。




***



ごんべの曾孫・・・だと・・・?



「今度ごんべの曾孫って奴も来たらいいな!どんなシュート打つのか・・・わくわくするぜ!」
「わたしの曾孫っていうのもなんか現実味がないけど、会ってみたいな」
「カノンたちが幼なじみってことは、オレたちずっと一緒にいるってことだよな」
「嬉しいね」


ほのぼの話す円堂とごんべをよそに、一部では不穏な空気が漂っていた。


ごんべに曾孫がいるということは、この先の未来で彼女が子供を産むということだ。
子供を産んだということはすなわち、相手がいるということ。


相手・・・おそらく、ごんべの結婚相手。
ごんべと結婚・・・?


そこまで考えた一同の間に、ゴングが鳴り響いた・・・。



「・・・足が速いと言っていたな」
「スピードなら僕も負けないよ」


風丸の呟きに、間髪おかずに吹雪が返す。
片目で睨みつける風丸に一歩も引かず、一見人畜無害な微笑みを返す吹雪だがその目は一切笑っていない。



「待て。頭がいいとも言っていただろう」



風と共に氷の欠片が飛び交い始めたその場に、どや顔をした鬼道が参戦した。

頭がいいと言えばオレしかないだろう、とでも言いそうな鬼道に場の雰囲気は更に悪化する。


「やだな、鬼道くん。自分でそんなこと言っちゃうの?」
「そもそもごんべも成績がいいからな。相手もそうである必要はないな」
「ふっ、負け惜しみか」


自分で言っちゃうとか恥ずかしいよね、大丈夫?と笑みを深める吹雪。
賢さというものが遺伝であるならばごんべだけで十分だから鬼道は別に必要ないよな、と言外に匂わせる風丸。

それらを鼻で笑い飛ばした鬼道に、ついに吹雪の笑顔が剥がれ落ちた。


すっかり蹴落とされた他のメンバーたちが距離を取ろうとじりじり後退していく中、我らがエースストライカーが前へ進み出た。


「いや、カノンはストライカーだと言っていた」
「待て豪炎寺。カノンは強力なシュートを打つと言っていただけで、ストライカーとは言っていなかったはずだが?」


睨み合う豪炎寺と鬼道。

この時点で、風丸、吹雪、鬼道、豪炎寺以外、周りの様子に全く気づいていないごんべと円堂を除いたメンバーはその場から逃亡していた。


…空気の読めない海の男を残して。



綱海は険悪な空気に気づいていないのか、頭の後ろで手を組みながらからからと新たな爆弾を落とした。


「ごんべはいい母ちゃんになりそうだよな!オレ子供はたくさん欲しいぜ!」
「ばっ綱海!?」


意外に空気の読める染岡が連れだそうとするが、もう間に合わない。
四人の視線を一手に引き受けた綱海は危機感もなく笑っている。



「綱海、それはどういう意味だ?」
「え、だっていつも円堂の世話してるだろ?あれ見て、ごんべと結婚したら楽しいかなーって」



恐らく綱海に他意はない。ただ本気で普段の彼女の様子からそう想像しただけなのだろう。

だが冷静さを無くした彼らにそれは通じない。



「ほう・・・まさかの伏兵か」
「意外だな」
「・・・けど、綱海は条件に当てはまらないだろ?」
「条件?」
「カノンくんが言ってたことだよ、足が速くて頭がいい、強力なシュートを打つって」
「でもよぉ、それって曾孫の話だろ?別にごんべの相手の条件じゃないだろ。曾孫ってんなら子供の子供の更に子供だし、そんなに関係ないんじゃねー?」
「「「「!!」」」」


まさかの正論に衝撃が走った。
確かに、子供ならまだしも曾孫では少し無理がある。当然だ。
しかしそんなことにも頭に血の上った一同には思い至らなかった。鬼道も含めて。



「それよかオレ円堂が一番の強敵かと思ってたからよ、安心したぜ。カノンとそいつ、幼なじみってだけで親戚とかじゃねーもんな」



なんやかんやでごんべも円堂のこと一番好きそうだし、円堂もごんべ好きだろうしよーとのほほんと笑う綱海。


その言葉に思わず二人を見る。



「で、まじですげーんだぜ!ゴッドキャノン!」
「守も負けられないね」
「ああ!カノンが次来るまでにもっと特訓してやる!」


熱く語る円堂に、まるで子供を見るようなごんべ。
その間にはどう見ても恋愛感情なんてものは一筋も見あたらないが・・・。

この間に入り込むことは、かなりの至難の業だろう。
一番古い付き合いである風丸でさえ苦労しているのだから。


これが、もし何かのきっかけで恋愛感情になってしまったら、どう考えても勝ち目がない。


綱海を除く四人は目配せをし、互いの考えが自分と同じであることを悟ると行動を開始した。


「名無し、明日の紅白戦のチーム編成のことだが・・・」
「ごんべちゃん、ちょっと足首に違和感があるんだ。見てもらえる?」


鬼道と吹雪がごんべの両脇につく。



「円堂。シュート練習の相手になってくれ」
「オレも付き合うよ」


豪炎寺と風丸が円堂を連れ出す。



「あん?あいつらどうしたんだ急に」
「綱海・・・、おまえ凄いぜ」



疲れた様子の染岡に周りも同意する。


どうやら彼らはひとまず共同戦線を張ることにしたらしい。
ごんべと円堂の周りには常に誰かがへばりつき、なんやかやと理由をつくって二人を離すよう画策する。


恋愛感情はないものの下手すれば一番の強敵と認識された円堂は、しばらくごんべと二人きりになることはなかった。


その後、


「…最近、あんまごんべと話してねーなー…」


と寂しそうな円堂を見たマネージャー陣が動くまで、それは続いた。


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水面下になっていない…!
おいしいリクを活かせず申し訳ありませんでした。カノンくん大好きです!
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