壱万打御礼企画 | ナノ
「鬼道との絡み」

鬼道有人。
帝国学園からの転校生で、全国トップクラスの頭脳に鬼道財閥の跡取りという立場に加え、類稀なるそのカリスマ性で帝国学園のトップに君臨していた男。

その異質な存在は雷門においても変わらない。独特な外見と相まって、一般生徒には一目置かれた存在である。

そんな鬼道と、雷門一の男前と名高いごんべが寄り添うように並ぶ姿に、ごんべのクラスメイトたちはほぅっと息をついた。なんかオーラが違う二人である。眼福。


「すまんな、また借りてしまって」
「構わないよ。それにしても鬼道くんは本当に熱心だね」
「帝国と雷門は進み方が違うからな。教師によって出題傾向も変わってくる。それに名無しのノートはよく纏められているからな」


ごんべから渡された数学のノートを片手に鬼道が褒める。

そんな彼にごんべは感心したあと、何か思い出したように笑った。


「鬼道くんはしっかりしているように見えて、意外とおっちょこちょいなところがあるよね。よく定規や消しゴムを忘れたりするなんて、思ってもみなかったよ」


鬼道がごんべの教室を訪ねてくることは少なくない。
今のようにノートを借りにくることもあれば、些細な忘れ物をしてやってくることもある。


「・・・あまり笑ってくれるな」
「ふふ、ごめんね。だけど鬼道くんみたいな人に頼られるのは嬉しいものだね。わたしでよければいくらだって貸すよ」
「ありがとう」


鬼道が転校してきたその日、二人は出会った。
ごんべの親友である夏未から聞いていたし、生徒会副会長であるごんべも転校生がくるということを知っていた。

そして初登校のその日、生徒会室で二人は出会ったのだ。


祖父に厳しく育てられ、同級生よりも些か大人びていたごんべと、鬼道財閥の跡取りとなるべくして育てられた鬼道は話があった。


良き友人。
ごんべはそう思っている。




***




帰宅した鬼道は義父と食事を取った後、テストが近いからと嘘をついて部屋に篭もった。


タイムリミットは三日である。三日後、ごんべのクラスは数学があるためそれまでに事を済まさなければならない。


「土日を挟んでいてよかったな・・・」


すでに現代文、社会等は終わっている。後はこの数学のノートでコンプリート。


借りたノートと全く同じ真新しいノートを引き出しから出す。
ごんべが使用しているのと同じシャープペンにラインマーカー他もろもろもすでに準備済み。

というより、元々彼女が使っていた文具はほぼ全てが鬼道の手にある。
そう、忘れ物など鬼道はしていない。前々からごんべの持ち物をリサーチし全く同じものを用意して、返すときにすり替えていたのだ。

勿論それらは鬼道の元に来てから文房具として使用されたことがない。では何に使用されているかは、鬼道本人しか知らない。


「・・・相変わらず、美しい字だ」


やや右上がりの文字を指先でそっとなぞる。

彼女が生み出したものだと思うと、その一文字一文字をも愛しく感じてしまうなんて。


「ふっ。オレのごんべは罪な女だ」


このオレを虜にするなんてな。


ごんべの性格を表すように几帳面な文字の羅列に笑みを浮かべながら、作業に取りかかる。


新しいノートに彼女の筆跡、筆圧、使っているペンも全く同じものを使い、完全再現していく。手間と技術と根気が必要な作業だ。


今までに、雷門の進み具合を見たいのだと言って借りてきたノートは全てこうして完全な複製を作り、その複製をごんべに返している。
そうすればごんべが持ち歩き、ごんべの手に触れ、ごんべの文字がびっしり書き込まれたノートは鬼道の手に残る。

こうしてごんべの私物は本人が知らぬ間に鬼道のものとなっていた。


生徒会室で初めて彼女を見たとき、鬼道の世界は色を変えた。

ごんべの持つ書類にさえ、その指に触れられるなんてと嫉妬してしまうようになった。


そして鬼道の天才と賞される頭脳が囁いた。
ごんべの持つもの全て、オレのものにしちゃえばいいじゃん、と。


初めはシャープペンだった。
ごんべの竹刀を振るうために出来た蛸のついた手に握られ。癖なのか、問題を解いているときや考えごとをしている時にペンのノック部分を唇の下に当てるのだ。あの柔らかな唇に・・・!


借りるのは簡単だった。
授業後、移動教室から戻る為に廊下を歩いていたごんべにプリントを見せ、今から教師に提出にいくのに名前を書き忘れてしまったのだと言えば、ごんべは快く貸してくれた。急いでいるから後で返すと言ってその場を去り、ポケットに入れていたものとすり替えた。


それからも消しゴムを忘れた、定規を忘れたと繰り返してきたのだ。


そんなある日、休み時間にも関わらずノートを開き復習をしているごんべを見かけた。
その時。授業時間、ごんべの視線の大部分は板書する教師と教科書、そしてノートに向いていることに気づいのだ。

ごんべからの視線を注がれ、その手に触れられ、文字を刻まれるだなんて。なんて羨ましい・・・!


そうして思いついたのがこのノート完全複写である。鬼道の洞察力と技術を以てして初めて可能となる禁断の必殺技。


鬼道有人。
有り余る才能を無駄遣いしている男である。ちなみに本人に犯罪を犯している自覚はまだない。



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全国の鬼道ファンのみなさま、リクしてくださった匿名さん。大変申し訳ありませんでした・・・!(スライディング土下座)
まさかこんな鬼道さんが生まれるだなんて、書いてる本人もびっくりです。おかしいな、最初は盗撮魔だったはずなのに・・・。それも犯罪者ですねすみません。そしてまさかのジェ○ンニがやってくれましたネタ。ジェバ○ニが出来るならきっと鬼道さんも出来ると思うの。
企画参加ありがとうございました!



2011.10.15
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