「鬼道さんと豪炎寺さんによる取り合い」 |
今の状況をどう例えたらいいのか。 蛇とマングース?犬と猿? わたしの頭上で睨み合う鬼道と豪炎寺。同じ中学生とは思えないくらい迫力がある二人に挟まれ、思わず現実逃避をしてしまう。 だってこれ、本当怖いんだけど。なんの虐めだこれは。 ぐっと右腕が引っ張られ鬼道の方に倒れ込むと、すぐさま左腕が引っ張られ豪炎寺の方に。 むっとした鬼道がまたまた右腕を引っ張ると、それに対抗するかのように左腕が引っ張られる。 右へ左へぐらんぐらんと揺さぶられ、なんか気持ち悪くなってきたぞこれ。 「離せ鬼道」 「豪炎寺が離せばいいだ、ろうっ」 「いたっ」 右に強く引かれ鬼道の胸に鼻をぶつける。 鼻血出てないかと鼻を押さえる前に鬼道の腕が背中に回され身動きがとれなくなった。 「何をする、鬼道。ごんべが嫌がっているだろう、離せ」 「オレには嫌がっているように見えないが?なぁごんべ」 嫌とか言う前にひたすら息苦しい。 聞いてきている癖に後頭部を押さえつけるとはどういう了見だ。 「フゴウフガフゴゴ」 「ほら、構わないと言っているだろう」 鬼道離してよと言っています。 「オレには豪炎寺助けてと言っているように聞こえるがな」 惜しい。そうは言っていないが助けてほしいのは間違いない。 それを示すためにがっしり抱き込まれ体は動かせないので、首だけをどうにか動かし肯定を表す。 その時鬼道の鎖骨から首元をわたしの鼻先が掠めると、ビクンと鬼道の肩が跳ね拘束する力が弱まった。 その隙を見逃さずに豪炎寺が肩を掴み後ろに引っ張られ脱出。 「おお、圧迫死するかと思った・・・。ありがと豪炎寺」 両肩を掴まれたまま豪炎寺の胸元に寄りかかる。 圧迫死は言い過ぎだけど本気で酸欠になるかと思った。 後頭部をつけたまま見上げてへらっと笑えば、いつものクールな表情のままだったがくっついている背中から豪炎寺が震えているのが解った。 「え、どうしたの豪炎寺」 「何頬を染めているんだ豪炎寺。気持ち悪いぞ。離せ」 「いや。ごんべはこのままオレが持ち帰る」 「わたしテイクアウト出来んの!?」 「何だこの可愛い生き物は」 衝撃を受けていると肩に添えられていた手が腹に回り後ろからすっぽり覆われてしまう。 腹は押さえつけられているのにぐいぐい背中を押され昼ご飯が出そうだ。 圧迫の刑が終わったと思ったら後ろから伸し掛かりの刑とはどういうこと。 とうかどうしてこうなったんだっけ。 確か今日は午前しか練習がないから、昼ご飯をみんなで食べた後、これから何しようか話していたはず。 「ごんべを連れ帰るのはオレだ。ごんべ、おまえが食べたいと言っていたパティシエのケーキを準備した」 「あの雑誌に載ってたやつ!?」 今月はスィーツ特集だとかで載っていたケーキがあまりに美味しそうで、雑誌片手に鬼道の肩をバシバシ叩いて「これ美味しそうー!やばい!」と興奮したのはつい一昨日のことだ。 「でもあれ予約待ちなんじゃなかったっけ」 「ふっ。オレに掛かれば大した問題ではないさ」 いつもはイラッと来る鬼道のどや顔も今日ばかりは許せる気がする。 「オレの家に来るだろう」 「行くいーーーぐえぇ」 行くに決まってる!と言い切る前に腹に回っていた腕にぎゅうっと力が込められ奇声に取って代わる。 「ダメだ。ごんべ、夕香が会いたがっていた。遊んでやってくれないか」 「あ〜夕香ちゃん大好き・・・うぐ、豪炎寺、ちょっと離してぇ」 ペシペシ腕を叩くとようやく緩まり息をつく。こんな所でリバースするところだった。 そういえば最近夕香ちゃんと会ってないなー。 お姉ちゃんお姉ちゃんと慕ってくれる夕香ちゃんは本当に豪炎寺の妹かと思うほど可愛い。あんな妹わたしも欲しかった。まぁ、鬼道と春奈ちゃんも遺伝子の不思議を感じるけど。 そんな風に考え込んでいたら気づけば鬼道が近づいてきて、あれよあれよという間に鬼道と豪炎寺にサンドされていた。 「暑苦しい・・・!」 抗議してもどこ吹く風。むしろ聞こえていないのか睨み合う二人。 どうでもいいがわたしを挟んで密着しているため二人の顔も異様に近い。あれこれわたしが邪魔だったりする?ハプニング起きちゃうの? 片方が風丸とか吹雪あたりなら見てみたい気もするが、この二人のハプニングはあんまり見たくないな。むしろ吐きそう。 「それでごんべ、どうするんだ」 「もちろんオレだろう。今なら好きなだけ食べ放題だ」 「やめておけ。代わりにごんべが食われるぞ。夕香が寂しがっているんだ」 「豪炎寺、妹をダシにするのはやめろ」 「鬼道こそ金に物をいわせたやり方は感心しないな。部屋に連れ込んで何をするつもりだ」 ケーキは食べたいけど、夕香ちゃんと遊ぶのも捨てがたい。 あ、そうだ。そうだよこうすればいいんじゃん。わたし天才。 「決めた!」 「「オレだな?」」 「夕香ちゃんと鬼道んちにケーキ食べに行く!」 夕香ちゃん甘いもの大好きだし、一石二鳥! と、思ったのに。 「「却下」」 「なんでっ!?」 ___ シリーズ指定が無かったため、あまり書いたことのない女の子を目指しましたがなんか馬鹿っぽくなってしまった・・・。 大変お待たせした上尻切れトンボですみません!書き直し承りますので遠慮なくどうぞ!翠驪さん、ありがとうございました。 2011.10.12 Back |