壱万打御礼企画 | ナノ
「風丸といちゃいちゃ」



窓ガラスをがたがた揺らす強い風。
打ちつける雨音が外の様子を鮮明に知らせてくれる。


「あー、雷も・・・」


ぼんやり外を眺めていると閃光がが走り次いで轟音が響く。それに一郎太が雑誌から顔を上げた。


休日に一郎太の部屋に遊びに来たはいいが、朝からしとしとと降り続けていた雨は昼を過ぎてなお勢いを増す一方。



「さすがにこれだけ降る中帰りたくないなぁ」
「まだいいだろ。遅くなる前には送って行くし」
「ん・・・。でも雷ひどいなぁ」
「ごんべって雷苦手だったか?」
「苦手ってほどじゃないけど、好きじゃない」


閃光が走ってから雷鳴までの時間は、雷の発生場所との距離が関係しているのだという。
つまり光ってからゴロゴロと鳴るまでの時間が短いほど、近くに雷雲があるのだとか。

そんなことを考えているとまた稲妻が走り、次いで鳴り響く雷鳴は窓ガラスを震わせた。ああ、こういうお腹にずーんと来るような低い轟音も嫌なものだ。


「ごんべ」


ぼんやりしているとふいに名前を呼ばれ、振り返る前に腕を引っ張られぐるっと視界が回る。

気づいたときには背中に柔らかい感覚があり、目の前には一郎太のどアップ。


「あの、風丸サン・・・?」


なんでベッドに押し倒されているんでしょうか。


一郎太はその問いに答えず、後ろ手に掛け布団を引き寄せそのまま頭から被った。その一郎太の腕の中にいるわたしの視界も一郎太と布団に覆われ真っ暗になる。

何がしたいのか解らずひたすらに疑問詞を飛ばしていると、おもむろに耳を塞がれついでとばかりに唇も塞がれた。

耳を両手で塞がれているせいで外からの音は遮断され、自分の口の中で鳴る塗れた音が骨を伝い頭全体に鳴り響く。

普段とは違う音に無性に恥ずかしくなって耳を覆う手を外そうとするものの、さすが男の子。ビクともしない。


仕方なく力を抜いて身を任せたものの、布団に潜り込んで、更にキスされているせいで酸素が圧倒的に足りていない。
段々息苦しくなって離してくれるように身を捩れば、ようやく唇と耳が解放された。


「はっ、はっ・・・何、いきなり」


浅く何度も息を吸うが湿ったような温い空気が入ってくるだけで息苦しい。今すぐ布団をひっぺがして新鮮な空気が吸いたい。


「何って、雷が気になるんだろ?だから」
「いや意味わかんないから」
「だから、こうやって布団被って耳塞いでたら気にならないだろ」


確かに気にならないが、別に雷が怖いわけではないんですが。


「たまの休日なのに外ばっか見てるごんべが悪い」


未だ視界は真っ暗な為表情は確認できないものの、その声からは一郎太が拗ねていることがよーく解った。

確かに一日オフなのは珍しいのでこうして二人っきりでまったり出来るのは貴重だ。でも。


「自分だって雑誌見てた癖に・・・」


そもそも一郎太が構ってくれないからああなったのだ。

付き合いもそれなりに長いし、お互い無言で違うことをしていても別に苦ではない。苦ではない、が、手持ちぶさたになることもある。

雑誌に集中しているみたいだったし邪魔するのもあれだったのでぼーっと稲妻が走るのを眺めていたというのに勝手な言い分である。


「このわがままめ」
「うるさい。今から存分に構ってやる」


構ってやるといいながら、結局のところ構ってほしいのは一郎太ではないのか。
そういう前に再び唇を塞がれてしまった。


男らしい性格の癖に、わたしに対しては意外とわがままで子供みたいな一郎太。
それが甘えから来るものだと解っているのでついついわたしも甘やかしてしまうのだ。


垂れる一郎太の長い髪ごと首に手を回し、ぐっと密着する。
呼吸は苦しいけれど、そこには目を瞑るとしよう。


いつしか雷鳴も雨音も意識から消えていった。



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赤福さんへ。大変お待たせしました。指定がなかったのでいつも書く子とは違う感じでやってみましたが、いかがだってでしょうか。藤森のいちゃいちゃはこの辺りが限度のようです。企画参加ありがとうございました!


2011.09.30
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