壱万打御礼企画 | ナノ
「逆ハー落ちは風丸or円堂」

河川敷の桜の木の下、ブルーシートを広げて盛り上がる面々。
今年の桜も綺麗に咲いたので、満を持しての花見である。


人数が多いだけに持ってきたシートに収まりきらず、綱海たちなんかは地べたにどっかりあぐらを掻いている。


「桜、満開で一番いい時期だね」
「北海道は開花はもう少し先だよね」
「うん。向こうの桜も綺麗だよ。ごんべちゃんに見せてあげたいな」



野球拳だ早食いだの騒ぐ一部のメンバーを見ながら、隣に座る士郎くんと話しながらおにぎりを頬張る。何て平和なのだろう。


「このお弁当ってごんべちゃんや木野さんたちマネージャーが作ったんだよね」
「そうそう、学校の調理室を夏未の権限で借りてね、朝から作ってきたの」


雷門中のメンバーはもちろん、キャラバン組やイナズマジャパンのメンバーも呼べるだけ呼んだ結果かなりの大所帯になってしまったため、急遽食材を集めわたしと秋、春奈ちゃんに夏未、そして冬花ちゃんと総出で作ったのだ。それでもさすがに作りがいがあったが。


「僕、ごんべちゃんが作ったの食べたいな。どれがごんべちゃんの?」
「ああ、わたしが作ったのは・・・」
「えー、吹雪ごんべさんの解んないの?駄目だね〜」



重箱の中を見回して指さそうとしたとき、さっきまで口に詰め込みすぎて喉に詰まらせた壁山くんを笑っていたリュウジくんが割り込んできた。


「・・・へぇ、緑川くんは解るんだ」
「当然!」
「じゃあ教えてくれる?」
「そうだな、例えばあのおにぎりなんか・・・」


リュウジくんが指さした先にはおにぎりを丁度頬張った不動くんの姿。
ところが不動くんはうっと顔を歪め、口をもごもごさせた後ぺっと何かを吐き出した。

ああ、あのおにぎりは確か・・・。


「おいおい、なんだよこりゃ。鮭の小骨残りまくってんじゃねーか。おにぎりもまともに作れねーのかよ」
「・・・それ、わたしが作ったのよ。悪かったわね」


そう、夏未の作ったものだ。形は随分綺麗になって腕も上がったものの、もう少しと言ったところか。

じとっと下から睨みつける夏未に周りからも非難の目を向けられた不動くんはやっちまったという表情で固まっている。



「あのおにぎりなんか?何かな緑川くん」
「あー、あのおにぎりはごんべさんぽくないかなー・・・て。ま、まあ食べればすぐ解るって!」
「僕だって食べれば解ると思うよ」
「じゃあ勝負する?」
「お、なんだなんだ面白そうだな!オレもやるぜ!・・・で、何するんだ?」



綱海の乱入により何故かわたしの作ったものを当てるといういまいち意味の解らない勝負が幕を開けることとなった。


「お兄ちゃん、負けないで!」
「任せろ春奈。分析はオレの得意分野だからな」


「面白そうですね!豪炎寺さんもやりましょうよ!」
「いやオレは・・・」
「もしかして自信ないんですか?」
「・・・参加しよう」


「食べ物のことなら負けないっスよ!」
「ししっ、タバスコ入りのやつ誰が引き当てるかな〜」



さすが綱海と言うべきか。
士郎くんとリュウジくんだけの内輪の対決がもの凄く大げさな勝負に変わってしまった。


一見意味のないことでも意地を張り合い勝負ごとに発展してしまうのも若さ故なのだろうか。


重箱を取り囲む塊から逃れシートの端でお茶を啜りながら年寄り臭いことを考えていると、意外な人物が隣にやってきた。


「どうしたの、いつもの守なら率先してあの中にいるのに」


紙皿に料理をこんもり盛った守がどかった腰を下ろした。



「だってこれごんべの作ったやつ当てるんだろ?オレらがやったら勝負になんないし」
「オレたちは食いなれてるからな。正直見ただけで解る」


守に続いて反対側に一郎太が座り、右手に持っていたお皿をくれる。


「だろ?」
「そうみたい」


わたしに渡したお皿にはわたし以外が作ったものがいくつか。
そして一郎太の左手に乗るお皿にはわたしが作ったものだけが盛られていた。


悪戯っぽく笑う一郎太に思わず吹き出す。
確かにこの二人にははなから勝負にならないお題だったようだ。


「なあなあ、誰が最初に当てると思う?やっぱ鬼道かなー」
「複数回答になるからな。確率じゃないか?」
「壁山くんの食に対する執念が勝つんじゃない?」



満開の桜の木の下、賑やかな仲間たちを見ながら久しぶりの三人でのんびりと料理を摘む。
酷く穏やかな空間の中、穏やかな春の一時を過ごした。



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お、お待たせしました・・・!円堂か風丸オチとのことだったので、幼なじみオチにしてみました。甘さは控えめですが幼なじみ組の付き合いの長さを感じていただけたら嬉しいです。企画参加ありがとうございました!
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