「主人公の誕生日を皆で祝うお話」 |
明らかに挙動不審な円堂。 そして恐らく足止め役にされたのだろう鬼道に、もう今年もこの日が来たんだなぁとごんべはしみじみ頷いた。 「・・・名無し、気がついてるだろう」 「知らないふりをするのがマナーでしょ?」 「・・・もう十分待ってやってくれ」 終業後、円堂を始めとするサッカー部員たちが声を掛ける暇もなく教室を飛び出していった。 そこに鬼道がやってきて、ごんべの鞄を持ち適当な席に座り込んでしまった。 鞄を取られてしまってはどうしようもないのでそのまま鬼道の前に座り、苦笑混じりに会話を交わす。 今日はごんべの誕生日だ。 数日前から円堂がそわそわしだし、秋たちもこそこそと動いていたので思い出した。 今日に日付が変わった瞬間に吹雪からメールが届いたし、日中もちらほらおめでとうメールが届いた。 サッカー部でどうやら今年も誕生日パーティーを計画してくれているようなので、明らかに不自然な行動をする面々に知らない振りを決め込んでいた。 そのまま少し話し込み、時計を確認してから部室に向かう。 ドアを引いた途端、派手な破裂音に出迎えられた。 「ごんべ!誕生日おめでとう!」 クラッカーを握った部員たちに、ケーキの周りを囲むマネージャー陣。 後ろにいた鬼道の頭にはクラッカーから飛び出たリボンが乗っている。 「さっ、ごんべ先輩はここに座ってください!」 春奈に背中を押されケーキの真正面に座らせられる。 ごんべが座ったのを確認してから皆席についた。 「これ、プレゼント!」 「守・・・!嬉しい、ありがとう」 うずうずしていた円堂から渡されたのは丸められた画用紙と封筒。ごんべはそれを受け取りぎゅっと胸に抱えた。 「見てもいい?」 「おう!今年は力作だぜ」 許可をもらいいそいそと画用紙を広げる。 どれどれ、と興味津々に皆ものぞき込む。・・・昨年もこの場にいた者を除いて。 「こ、これは・・・」 白い画用紙一杯に、サッカーボールとごんべの似顔絵。まるで幼稚園児のようなプレゼントに思わず固まる。 そんな中、ごんべだけは感極まったように瞳を潤ませた。 「守・・・、年々上手になっていくね。ありがとう、これも大切にするね」 「へへっ。ごんべ、いつもサンキューな!」 手紙は家に戻ってからじっくり読ませてもらおう。 内容は毎年感謝の言葉と、一年こんなことがあったな、これからもよろしくなというものだから、今年もそうだろう。 今年はたくさんのことがあったから、どんなことが書かれているのか楽しみだ。 ・・・と喜ぶごんべにとっては幼稚園のころから毎年お馴染みのプレゼントなので疑問に思うことはないが、彼らにとっては衝撃的なプレゼントだった。 「円堂画伯ってとこだね・・・」 円堂の字があまり上手くないのは周知の事実だが、実は美術の成績もあまりよろしくない。それを反映するかのような絵を見てついマックスがこぼせば、去年もよく似たものを見て固まった染岡と半田が深く頷いた。 「・・・円堂は母の日か何かと勘違いしていないか」 「まぁ名無しは円堂の母親とか言われてるが、これは・・・」 「去年もこんなんだったぞ。なぁ風丸」 「毎年こうだ」 「「「毎年・・・」」」 豪炎寺や鬼道ですらこれはさすがに・・・と思ってしまうが、染岡が風丸に確認した事実に一同言葉を無くしてしまった。 いいのか、それで。 「今までのも全部大切に保管してあるの。もちろん一郎太のも」 「風丸・・・おまえもか」 「オレは昔だけだ!今はしてない!」 ごんべの暴露に一同の胡乱な目が一斉に風丸に向けられる。 昔、といっても小学生の低学年の頃まで、あまりにも自然に円堂がやるものだから風丸もそれが普通だと勘違いしてしまった時期があった。あの頃の風丸は人見知りが激しく対人スキルが低かったせいもある。 必死に弁解する風丸に、場の空気を切り替えようと秋が席を立ち、ホワイトボードの裏に隠していた荷物を持ってくる。 「ごんべちゃん、これ吹雪くんたちから。みんな送ってくれたのよ」 「それからこれは、わたしたちからです!」 「ケーキはうちのシェフが作ったわ」 秋から渡されたたくさんのプレゼントに、女子一同と書かれた大きな包み。 それに便乗するかのように各々机に置いていき、どんどん増えるプレゼント。 こんなに賑やかな誕生日は初めてで、なんだかくすぐったい。 「こんなにプレゼント貰ったの、初めて」 こんもりと山のように積まれたプレゼントに、豪華な料理。手作りの輪っかの飾り付け。 そして皆の満面の笑み。 「これからもよろしくな!ごんべ!」 ___ 大変お待たせしました!相変わらず尻切れとんぼ・・・ リクエストありがとうございました! Back |