どくり、と心臓の脈打つ音と同時に僕は冷たく薄っぺらなそれに醜く濁った欲を吐き出した。こぼれ落ちたコーヒーの染みのようにじわりと広がる虚無感と恍惚に、ため息を一つ吐いて世界を遮断すべく目蓋を閉じる。この小さく虚ろな時間がまるで大罪をようやっと白状できた犯罪者のようで、僕は堪らなく安心するのだった。
 柔らかな夕日が僕の虚しい懺悔を赦すかのようにひらひらと舞うカーテンの隙間から顔を出し、僕の足元を照らした。視界が滲む。きみの香りが風に運ばれて僕の鼻を擽ったからだ。

 きみを知ってから、僕は醜くなってしまった。


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