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質問:大学や専門学校に進学する君たちに問う。将来は何になりたいですか。詳しく書いて下さい。
回答:金持ちになりたいです。

シャープペンシルをくるくる回しながらおれは再び薄っぺらい紙に向き直った。将来は何になりたい、とかしかも詳しく書けとか困る。溜め息一つ吐くと同時に机が陰った。見上げると見なれた顔。
「…書き終わったの?」
「ん。もう決まってるからな」
いいなあ、と言えばグリーンは眉を顰めておまえも真面目に考えろよ、と額を叩かれた。痛くはないけど手を当ててしまうのは反射ってものなんだろう。そしてもう一度溜め息を吐いて机に突っ伏すとぐしゃ、と紙が悲鳴をあげた。窓の外に目を移す。もうそろそろで日が沈みそうだった。気付けば廊下にも人はいなくて、いるのはおれたちくらいなものだ。そろそろ帰らなければ母さんに心配をかけてしまう。そんな事を考えているうちに日はゆっくりと沈み、教室は暗くなっていく。これって今日までに提出しなきゃだめだったんじゃないっけ。皺がついた紙を人差し指と親指で摘みながらグリーンに聞くと他人事のように肯定の言葉が返ってきた。
「別に明日でもいいんじゃね?もう暗いしさ、それにそこまで心狭くねーだろ」
「…社会人になって働くようになったら許されないんだぞ、とか言われそう。というか前に言われた事あるんだよね」
あの時も何か提出しなければいけないものをおれがなかなか書けなくて、それで遅れたはずだ。担任もおれの事を分かってるだろうに。提出しなければならない期限を守った事なんて一度もないのだから。いい加減諦めてくれないだろうか。太陽がもう少しで姿を隠す。手元は闇に浸かり、廊下は浸かるどころか飲み込まれたようだ。グリーンがおれの鞄を持った。
「おいレッド。帰るぞ。明日にすればいいじゃん。あ、何なら俺のとこに世話になりますって書けば?」
「…それもそうだね。うん、それにしようかな」
「……まじで?」
グリーンの顔は暗くて見えない。嘘は吐かない、と一言吐けばグリーンの笑い声が聞こえた。どうせなら、とグリーンは話を切り出す。にやり、おれは口元を歪めた。
「そう、どうせなら俺の嫁って書けよ」

質問:大学や専門学校に進学する君たちに問う。将来は何になりたいですか。詳しく書いて下さい。
回答:幼馴染の嫁になって金持ちになります。


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