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「…惚れ薬とか入れなくてもおれは昔からグリーンが好きだよ」
表情に変化など起きないレッドの言葉は稀に本気か冗談か分からない時がある。言葉通り無表情なレッドは少々冷めたであろうココアを喉に流し、赤い目で俺を見据えた。先程揺らいだ赤はもう平静を取り戻している。今までこいつを見てきた俺から言わせてもらえば嘘を吐いているようには見えない。宝石のような赤い目は喉から焼け付くような感情を込み上げさせるには充分な誘惑だった。俺がレッドを好きだと認識した時のような初々しい感情はぐるぐると渦を巻く。
「なあ、レッド。ライクとラブは違うんだぜ」
「…敢えて言うのならラブ、かな」
レッドは微笑する。俺たちがまだ幼かった頃のような無邪気さで。全てを惹きこむ深紅の目。俺は手を伸ばし、レッドの白く柔らかい頬に触れた。惹きこまれる。この目を塞がなければ惹きこまれる。手が勝手に唇に触れた。

「ただいまー」
半ば叫ぶようにして帰宅を告げると奥の扉からレッドの顔がちらりと覗かせた。レッドはどうやら膝を抱えて座り込んでいたようで、身体を揺らしながら俺にお帰り、と言う。そして次に出た言葉はお腹空いた、だった。
「はいはい。今作るから待ってろ」
「ん。疲れてるのにごめん…」
気にするな、という意味を込めて頭をぐしゃぐしゃ撫でる。俺としてはキッチンが悲惨な事になるよりは自分が疲れていても作った方がよっぽどましだ。レッドに初めて作らせた料理とも呼べない代物を思い出して思わず頬が引き攣る。…あれは酷かった。とてもじゃないが思い出したくもないそれを振り払うように俺は頭を振って冷蔵庫を開けると独特の冷気が溢れだす。そういえば昨日で買っておいた食材はなくなったのだと思い出した。
「今日、インスタントでいい?」
「…オムライスとか、ハンバーグ」
「ああ、うん。そうだよなごめん。今からハンバーグはきついからオムライスにしような。ちょっと買ってくる」
どうにも俺は昔からこいつには甘い。一緒に住もう。こう言って恥ずかしくなった頃が懐かしい。あの頃は初々しかった。お互い好きだったのにも気付かないで毒だの就職だの何だのって馬鹿らしい。脱いだばかりのジャケットを羽織って鞄から財布だけ取り出すとレッドの早く、と急かす声。俺はあの頃のように白い頬に手を添え、親指で唇をなぞる。無表情を表わす深紅の目が緑を映した。唇が勝手に動いた。



(初代)


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