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おれは世界一強いトレーナーになりたいわけじゃなかった。ただ、本当にポケモンが好きで、バトルが好きで。勝った後に喜ぶ皆の顔が好きだった。それがどうして間違ったのだろう。目がまわる。
グリーンはおれを好きだと言ってくれる。大好き、愛してる、ずっと一緒にいような。そう言っておれを抱きしめてくれる。別に不満なんてないし、愛が欲しくないわけじゃない。でもグリーンは嘘吐きなの。それを知らない振りしておれの気持ちは浮かんで甘えるけど。いつもおれには雪が降り注ぐ。きらきら光って綺麗だけれど、おれには冷たすぎる。
「おまえ、さっさと下りて来てくれよな。俺の事も考えろ!」
「…嫌。ごめんね、まだ下りれないの」
「……まあ昔からおまえは自分の決めた事、変えないもんな」
「うん、ごめん。愛してるよグリーン」

綺麗に並べただけの言葉はおれの口から吐き出された。疑っているのに、嘘だって分かっているのに、一方的にとれる愛の言葉。それはいつか崩れて、欠片さえ残らない。心なんて、誰にも分からないから。グリーンの言葉が嘘なのか本当なのかさえも、分からないから。嘘でも良い、おれは必要とされたい。愛してるってグリーンが言ってくれれば、おれは必要とされてるって思うんだ。それと同時にグリーンはおれにずっとずっと嘘の言葉を吐かなきゃいけない。嘘はばれたら意味がないでしょう?自分で自分を縛ってるの、おれが更にそれを強く縛る。自分のためだけに。とっくの昔に太陽なんて堕ちた。闇に呑み込まれた。善なんて言葉、おれには存在しないのだ。それでも、気持ちはゆらゆら浮かぶ。善を失った代わりに、気持ちは一生浮かんで甘え続ける。
「俺も愛してる」
「…うん、ありがとう。愛してる愛してる愛してる」

綺麗に並べた言葉。吐きだされる嘘。ううん、嘘じゃない。ただおれは疑っているだけなんだ。グリーンを。知ってるくせにね。グリーンの言葉は嘘だって。おれって狡いから仕方がないの。
「…レッド?おい、おまえ何かおかしいぞ」
「心なんて誰にも分からないんだよ、グリーン」
太陽が失くなったおれに降り注ぐものは雪と雨。冷たくて冷たくて、それが疑いを凍らせた。



BGM:Romeo


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