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っとレッドは俺の前を歩いていたように思う。追いつく事なんて俺には到底無理だった。レッドがいた場所に俺が行けば、その頃にはもう既にレッドは俺の前をゆっくりと歩いている。だから俺とレッドの間には距離があった。それは俺がどう足掻いても縮めることなど出来ない距離。俺はいつもレッドの足跡を探してそれを辿って、でも追いつけなくて。レッドの通った道を辿って生きる事しか出来ない俺は果たして自分の人生だといえるのだろうか。小さい頃の幸せな思い出ばかりが宝物で。ああ、そういえばじいさんはいつもレッドばかりを褒めていたっけ。今になればちゃんとじいさんも俺の事を見ていてくれてたんだって分かるけれどあの頃は分からなかった。レッドの強さに、大きさに俺は押し潰されそうだった。幸せな思い出なんてものも、分からなくなったよ。
強く握りしめたレッドの手には無数の痣。俺が力を込めたせいだった。それでもレッドは幸せそうに笑ってありがとう、と言う。俺は意味が分からなかった。何がそんなに嬉しいのか分からなかったのだ。レッドは掌についた痣にキスを落として微笑み、俺の首に手を這わせる。白くて細くて綺麗な指がくい込んだけれど怖くはなかった。だけど俺は泣いて、レッドに許しを乞うた。何を許してもらうのか、俺自身分からなかったけれど。

まえて欲しかったように思う。誰かにおれ自身を見てもらいたかったから。上辺だけじゃなくて、深くにある本当のおれ。殻に閉じ籠ってばかりのおれを見て欲しかった。そんな本当のおれを受け入れて欲しかったのだ。閉じ籠っている時に描いた夢に、言葉が欲しかった。馬鹿にされても良いから、おれ以外の人間の言葉を。叫んでも何しても、誰も聞いてくれなかったけれど。
壊せば良いのだ。おれを、夢を、他の人間を。だからおれは大事な人を壊すことにした。首を絞めて、おれだけしか見れないように。おれの夢を聞かせるために。おれが夢のおれに変わる前に、壊したい。彼はおれの気持ちを知ってか知らずか、ごめんなと言う。彼につけてもらった痣が疼いた。

俺が一番愛されていた。愛されていなかったのはおまえだった。ごめんな。
愛される振りをしていた。本当に愛されていたのは君だった。だから君はおれだけを見て。

永遠のを聞いて欲しいんだ


(過去 虚 現実)


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