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この人は吸血鬼らしい。言われてみればそんな感じがするようなしないような、まあ見た目は普通の人間だった。茶色の髪に普通より白い肌を見ても吸血鬼だと分かる人間は少ないだろうし、ただ一つ。彼が吸血鬼だと分かるところがある。それは当たり前に鋭い歯なのだが。
「吸血鬼さ…じゃなくてグリーン。それ何の冗談」
「冗談じゃない。ごめんな、今まで黙っててさ」
申し訳なさそうに笑った吸血鬼はおれの恋人だ。そして人付き合いが苦手なおれの、唯一の友達。そういえばあまりキスをしたがらなかった気がする。グリーンの歯を見れば納得出来る上に、今まで気付かなかった自分が情けない。グリーンは少し悲しそうな顔をしておれの肩に手を置いた。もしかして血を吸われるのかもしれない。だけどおれは本望だ。大好きなグリーンに血を与える事が出来るだなんて、こんな嬉しい事はそうそうない。

「ごめんな。もうおまえとは会えないよ」
「…え?どうして、おれはグリーンが吸血鬼でも怖くないよ」
「違う、そういう問題じゃないんだ。ごめんな、ずっと一緒にいられなくて。ごめんな」
グリーンは俺に縋った。何だ、これ。おれは夢を見ているんだ、きっと。目が覚めたらいつもみたいにグリーンが横で気持ち良さそうに眠っていて、おれがグリーンを起こして、グリーンが朝食を作って。夢だよね、でもおかしいよ。グリーンの流した涙が温かいよ。これは夢だろう、どうして温度を感じるの。ねえ、グリーン。夢だと、嘘だって言ってよ。
「…俺がいなくなってもちゃんと飯作って食べろよ。おまえただでさえ細いんだから」
「ねえ、グリーン嘘だよね。どうしてそんな事を言うんだよ」
「……レッド、最後にさ、血頂戴」
首元に熱い息が感じられた。ああ、もうこれは夢じゃないんだね。嘘じゃないんだ。うん、と呟いて目を閉じる。小さな痛みが走って生温い液体が首を伝った。吸われてるなって分かる。真っ赤な真っ赤なおれの血。それがグリーンの体内を巡るならもうそれで良いよ。力強く抱き締められた。その温かさと、心地良さに俺は目を閉じる事しかできなかった。

首に巻いてある包帯が夢ではないと教えてくれた。丁寧なこの巻き方は間違いなくグリーンがやってくれたのだろう。首が熱い。まるで熱の全てが傷に集まったかのような、そんな感覚だ。テーブルに目をやると袋にたくさん入っている何か。中を見てみるとたくさん詰まった食材。本当に心配症だね、グリーンは。かさり、音をたてた袋が日常にとけこんだ。


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