log | ナノ

今日は妙に身体が痛い。一部分ではなく、全体が。足も腕も首も、胃も心臓も全部。そういえば心臓って痛み感じるんだっけ?心臓を鷲掴みにされている気がしてならない。とにかく俺は身体が痛いんだ。レッド元気かなあ。一昨日食料届けに行ったばかりだけど今日も行くか。会いたいなあ。自室の天井を見上げながら考える。今日は何もかもが上手くいかない気がする、し本当に痛くて仕方がない。まだベッドで寝ていたイーブイが耳を立て、ドアに向かって威嚇。え、何だ。どうしたんだよイーブイ。訳の分からない俺はイーブイを抱きあげた、と同時にドアが勢いよく開いて、沈黙を裂く声が響く。

「グリーンさん遊びに来ましたよー!」
「…おい、ゴールド。ジョウトのやつってのは常識ねーのか?」
「やだなー。俺とグリーンさんの仲でしょ?許されるんですよ!」
「そうか分かった。おまえ殺されたいんだな」

冗談ですよ、とにやにや笑ったのは全然可愛くもない後輩だった。せっかくの休日だってのに何の用だ。腕の中のイーブイが嫌そうな顔をしたのをゴールドは見逃さなかったらしくて、俺、イーブイに嫌われてるんですかねー、と大してショックも受けてない様子で言った。いつもは温厚なイーブイが、ゴールドに向かって唸る。今日は、本当に全部おかしい。ん…、何か変な臭いもする。

「ゴールド、おまえどこ行ってきたんだよ。何か臭いする」
「ああ、すいません。臭いとれてませんでしたか?とれたと思ってたのになー」

我慢して下さい、と言ったゴールドを見て何だか無性にレッドに会いたくなる。こいつ、俺を好きなんだか何だかは知らねーが俺が好きなのはレッドだけだ。レッドに会いたい。そうだ。会いに行こう。せっかくの休日だし、ゆっくりあいつとも話が出来るし、ゴールドと話さなくても良い。これほど良い案はない。

「残念だけどな、ゴールド。おまえ帰れ。俺、レッドのとこに行くから」
「えー、何でですか!休日使ってまであの人に会いに行かなくたって罰当たりませんよ?」
「俺が会いたいんだよ。だから帰れ。それか下にいる姉ちゃんとお茶して帰れ」
「グリーンさんがそう言うなら。…でもグリーンさん。行っても無駄かもしれませんよ」

少し大人しくなっていたイーブイが咆哮。俺はゴールドの言った意味について考える。行っても、無駄?どういう事だ。レッドはいつもあそこにいるんだ。ふらふらと下りてくるようなやつでもない。考えられるのは、一つだけ。思考回路停止。ゴールドはイーブイの首元を掴んだ。

「さっきから何なんだよ。俺に向かってさあ。グリーンさんに何甘えてんの?近付いていいのって俺だけなんだよ?」

空いている手には赤黒い液体がべっとり付着したそれ。鈍色を放つ、人を殺せる、それ。イーブイがころ、され、る。レッドは既に殺され、た?なあ、嘘だよな。嘘って言ってくれよ。やめろよ。イーブイを傷つけるなよ。何も関係ないだろ。そんなのおまえの八つ当たりだ。巻き込むな。あああああ、こいつ、狂ってる。目の前が真っ赤に、ああこれってレッドの色だ。レッドレッドレッド。俺、おまえの事が一番好きだ。金色なんてそんな豪華な色じゃなくて、俺は、俺は、あかいろが、死んだら俺もあかいろ、に。イーブイ、ごめんな。おまえも、レッドの事好きだったもんな。あかいろに染め上げられた毛が、なあイーブイ。レッド、元気にしてる?金が、笑う。

「ねえ、グリーンさん。俺のものに、なりましょ?」

永遠に不快な色






第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -