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頬にナイフを突きたてられ、それは皮膚を破った。ぷつり、と音がして生温い液体が垂れる。滅多に笑わないレッドが愉快そうに笑って、俺はそれに眉を顰めた。何だ。今日のレッドはおかしい。いつもおかしいけど今日はかなりおかしい。顔を近づけられて生温いそれ、を舌で抉るように舐めとられた。俺は硬直。

「楽しいね、グリーン。凄く楽しいよ」
「俺は痛いけどな」
「ああ、ごめんね。少し傷を付けてみたかっただけ」

悪趣味だなあ、と言えばレッドは目を細めてどうとでも言ってよ、と喉を震わせる。ね、これっておれのものって印でしょ?耳に口を寄せて囁いたレッドの言葉に何を今更。と返す。

「今更ってことはずっと前からおれのものってことかなグリーン」
「あー、まあ。おまえから離れられるなんて思ってないからな」

グリーンみたいな物分かりの良い人間は大好き。おれのものであるかぎり溺愛するよ。愛して愛して愛して、ねえ。どうされたい?にっこり笑ったレッドに寒気がする。やっぱりこいつ、おかしい。こいつがこの世界に生まれ落ちた時から狂ってやがるんだ。溜め息一つ。そうだな。取り敢えず両手を縛ってるこの縄、外してくれねえ?

「嫌だよ。外したらグリーン、逃げるから」
「おいおい、随分信用ねえな。逃げませーん。レッドくんがいる限り逃げれませーん」
「うん。なら外してあげる」

弄んでいたナイフが縄を切った。ぱらぱら、と細切れになったそれは地面に落ちる。痕ついてるし。いってー。手首を擦っていると座り込んでいる俺の上からレッドの声が降った。俺の姿も、陰る。

「おれ、グリーンが好きで好きで仕方がないんだ。おれってだめなやつだからグリーンの事縛っておかないと、嫌われるって思った。縛っても嫌われるのにね。グリーン、お願いだからおれの事、嫌わないで。おいていかないで」

生まれ落ちた時から狂ってるやつが何まともな事言ってんだか。思わず苦笑い。狂ってるやつは狂ってるやつなりに一生懸命だった。それなら俺も狂ってるやつに適当な対応、即ち狂った対処をしてやろう。俺の身、全部を捧げて。泣き崩れそうなレッドを支えて言う。なあ、一緒に死のうぜ。心中なんて堪ったもんじゃない、と昔に思っていた俺が紡ぎだした言葉は遠まわしに心中しよう、という意味を含んでいた。皮肉すぎるぜ。人を巻き込んで死ぬなんて最低だと思っていた。自分だけ死ねよ、と思っていた。だけど心中ってさあ、好きな人と永遠になるって事なんだよな。俺、こいつとだったら心中してもいいかなって思ったんだ。レッドの手からナイフを奪う。

「なあ、どんな死に方にする?」

俺の声は至極嬉しそうで、楽しそうだった。

憎い程に嫌い
ねえ、どこで間違ったの?






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