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宝物だったシルバーリングを指から外すと、何とも言えない虚無感が襲ってきた。何をする時も外さなかったそれ。簡単に指から外れたそれが残したものは絞めつけたような、赤い痕だった。それがおれの指に付いていた、という事実は痕でしか確認できない。そんな事を思う自分を、女々しいと思う。シルバーリングは、グリーンがおれに初めてくれたものだった。銀の輝きを失って、光さえも放っていないそれはおれとグリーンの関係に酷似している。結局、こんな関係か。

「レッド?何ぼけーっとしてんだよ」
「…何でもない」

荷物まとめたよ。極力無表情にそう言えばああ、そう、と興味なさそうに返される。冷たい、ひと。だけど人に依存するととても暖かくて、優しいひと。痕がくっきりついた指に目を落とせば、それに気付いたグリーンが自分の指を見る。彼の指にもおれと同じ、シルバーリング。ペアリング、だった。グリーンはゆっくりと指輪を外す。おれと違うところは、輝きだ。曇って、いなかった。

「これ、もういらねーな」
「そうだね」
「おまえにやるよ。捨てるの面倒だし」

投げられたそれを両手で取る。持ち主を失った指輪はそれでも輝いていた。嗚呼、皮肉な事この上ない。二つのシルバーリングを握り締めて、グリーンを見て、言う。

「おれ、グリーンの事嫌いだった。大嫌いだったよ」
「…そうか。じゃあ二度顔と見せんなよ。俺とおまえ、幼馴染でも何でもねーよ。関係なんてなかった事にしよう」

当たり前じゃない?笑って言えばグリーンはバツが悪そうに目を逸らす。自分が悪いっていうの、分かってるんだ。そうだよね、浮気したのそっちだもんね。おれと別れようっていったのグリーンだもんね。おれに何一つ、非はない。家に帰るよ。そう言ったグリーンの背中をおれは見送る。ねえ、グリーン。これでおれたち、最後なんだよね。幼馴染っていう関係も全てなくして、他人になるんだよね。悲しいね、グリーン。おれたちって本当馬鹿だよね、グリーン。扉が閉まる音と、シルバーリングの互いに擦れ合う無機質な音が耳について離れない。

曇った指輪のように





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