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おれに一度だけ勝った彼はこう言った。レッドさんが素直にならないなら俺、グリーンさんの事貰っちゃいますよ。
ああ、うん。別にいいけど。吐き捨てた言葉はおれの意思なんて関係なく、思ってる事と反対だ。はっきり言って、面倒だったんだ。恋とか愛とか、それを誰に向けようが人の勝手だし、好意を向けている相手が自分に好意を抱いていなかったとしてもそれは仕方のない事だと思う。君は、力量不足なんだよ。グリーンにしか使った事のない口が面白いほど音を吐く。どっちみち、あまり使っていない喉は悲鳴を上げた。

「レッドさん。俺、本気でグリーンさんの事好きなんですよ」
「へえ、いいんじゃない?グリーンに言いなよ、喜ぶよ」
「真面目に、聞いて下さい」
「おれはいつでも真面目だけど」

面白いね。にっこり笑いながら言ってやると名前が金色の彼は不愉快だ、と言わんばかりな表情をおれに見せた。不愉快なのはおれの方だ。グリーンの事を何も知らない餓鬼がグリーンを好き?全くもって反吐が出るね。グリーンはおれを好きなんだよ。おれだけを思って、おれだけを追いかけて、おれだけの為に生きてるんだ。彼はおれだけの為に存在して、おれも彼だけの為に存在する。お互い依存してるって事、分かんないの?全て並べ立てて言ってやろうかとおれは本気で思った。結局、金色がグリーンに何かありもしない事を言っても困るしって事でやめたんだけど。あーあ、おれ弱い。あれ、でもグリーンは金色よりおれの事を信じるよね。それなら言っちゃおうかなあ。

「何考えてんだか知らないですけど、俺、アンタの事嫌いです」
「ああ、奇遇だね。おれも嫌いだよ」
「その割には随分と俺に笑顔を見せてくれるんですね」
「分かんないの?これ、君の事嘲笑ってるんだよ」

さいってー。彼はそう言ってまた不愉快そうな顔に戻った。アンタ性格悪いですね、と付け足すのも忘れずに。うん、おれ性格悪いよ。大事な人を奪うなんて最低な事するやつには特にね。グリーンも変なのに目付けられたなあ。可哀想に。いっその事、おれ、シロガネ山から下りてグリーンと一緒に住んじゃおうか。それはおれに出来て、金色には出来ない事。ねえ、それやったら嫌でも分かるでしょ?おれには叶わないって事。グリーンはおれの事が好きだって事。腹を抱えたくなるほど可笑しくて、おれは静かに笑った。グリーン以外の人の前で笑うのって久し振り。ケラケラ笑うと金色がモンスターボールを手に取った。え、バトル?嫌だなあ。おれ、今からグリーンのとこに行くんだけど。どうしてもバトルしたいならおれの不戦敗でいいよ。言えば顔を真っ赤にしてボールからポケモンを出した。それは背中の炎を燃え上がらせている。まるで今の金色の気持ちみたいに。こわいこわい。

「おれ、早くグリーンのとこに行きたいんだよね」
「…行かせませんよ」
「そう。じゃあおれは君を倒してグリーンのとこに行くよ」

肩に乗っていたピカチュウが飛び降り、前に出る。頬から電気がパチパチと漏れていた。一分もかからずに終わらせてあげよう。帽子を深めにかぶり直すと、金色の指示が聞こえた。怒ってる時って何をやっても上手くいかないの、知ってた?君が怒ってる時点でおれの勝ちだよ。だから君はいつもおれに負けるんだ。

歪みは純愛と





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