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「最近狂った愛情向けてる人が多すぎて普通のおれがおかしい人みたいだよね、グリーン」
「普通、か。普通の健全なオトコノコはシロガネ山に籠ったり、いきなり下山しては男である幼馴染の首絞めたりしないと思うけどなあ」
「…酷い事言うね。それにおれはグリーンが男でも女でも関係ないと思うよ」
「まあ別にシロガネ山に籠るってのは一千万歩譲って普通だと認めてやるとして、幼馴染の首絞めるってのはどうだろうな」

苦しくは、なかった。いや、少しは苦しいけど。だが幾ら細くてあまり力の無いレッドでもこれが全力だとは考えられない。本気ではないんだろう。取り敢えず俺の命は今のところ危うい位置にはいないらしい。ま、俺の返答次第でどうとでも変わるんだろうが。首絞めるのって何が悪いの、とそのまま跨りながら聞かれたもんだから変な気分になりそうだ。首を絞めるって行為のどこが悪いかって?全然悪くねーよ。殺意のないそれだとなれば悪いどころじゃない。ただのお遊びで終わるわけだ。ただそれを実行している本人は頭がおかしいって言われるけど。レッドは、自分がおかしいと分かってやっているんだと思う。それはそれで好意と置き換えても別に問題はなさそうだ。

「少し苦しそうな顔も格好良いね、グリーン。結婚してよ。じゃないと殺しちゃうよ?」
「無茶苦茶な。おまえそれを思い立って下りてきたのかよ。それとも今後の心配?」
「今後、ね。おれ、いつかは負けると思うんだ。その時はグリーンのとこに永久就職させてよ。料理洗濯、何も出来ないけどね。おれが女かな?それともグリーン?おれはどっちでもいいけど。ね、おれ今少し恥ずかしいから死んでよグリーン」
「嫌だ。俺だってまだ死にたくねーんだよ。一番おまえが知ってる事だろ」
「おれ、グリーンが好きだから嫌な事したいんだ。普通でしょ。それにグリーンを殺して刑務所生活もいいかなって」

レッドは一番人間らしくて、一番人間らしくない。人間の良いところ、悪いところ。全部詰め込んだらレッドみたいになるんだと思う。あー、俺良かった。レッドみたいにならなくて。俺までこんなんだったら誰も救いようねーよな。そんなレッドは好きだけど。純粋に俺を好きで、ただ悪戯したいだけだって分かるし。レッドは確かに自分の言う通り普通だ。異常はどこにも見当たらない。普通の普通を極めすぎて頂点に立った普通の人間だ。普通を極める時点で普通じゃないかもしれないけどな。

「死にたくないなら結婚して」
「脅しはんたーい。ていうかさ、何か悩みあんだったら素直にそう言えよ。毎回毎回悩みある度に首絞めて結婚迫るのやめてくれ。俺の身が本気でもたない」
「…もっと、強くならなきゃ。おれ、負けたら何も残らないんだ。怖いんだ」
「だから結婚?それと俺を殺して刑務所生活、と。あっはは。俺に力になって欲しいならなってやるけど」

殺させてくれるの?でもおれ、本当は怖くてそんな事出来ないよ。切羽詰まった狂い顔から表情が驚愕に染まってレッドは言った。あー、面白い。レッド、おまえ最高。

「じゃあさ、取り敢えずこの紙に名前書いてくれない?」

ポケットから綺麗に折り畳んでいた紙きれを器用に片手で取り出しそれを広げてレッドの目の前に突き出す。きっと困惑してるんだろうな。くすくす笑ってその紙を床に置くとレッドの視線もそれを追っかけて凝視。その顔たまんねーよ。これ本物じゃ、と言ったレッドに紙きれ、正確に言えば婚姻届を指差し書いてくれるよな?と問うとレッドが面白い遊びを見つけた子供のように笑った。結婚は出来ねーけど雰囲気だけで勘弁な。

縛り付けたのは紙
紙で関係が成立するのなら言葉でも成立すると思うわけですよ、俺は。






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