log | ナノ

学パロ

おはよー、と教室の扉をガラガラ開けて入って来たクラスメイトの男の声とそれに答えるようにしておはよ、と口々に言う彼と仲の良い女や男の声を耳にいれながらおれは机に突っ伏して考えた。グリーンがもしおれと同じクラスだったらおれもあの人たちみたいに色んな人と挨拶を交わせたのだろうかと。グリーンの人柄や人付き合いの上手さに縋るわけではないが、まあ少しくらいは色んな人に挨拶とかをしてもらえたかもしれない。おれは自分から挨拶なんて恥ずかしくて出来やしないから。いつも楽しそうに笑っている幼馴染の顔を思い出しておれは溜め息を吐いた。どうせ自分のクラスでも楽しくやってるんだろう。あの笑顔や優しい言葉をおれ以外の人にも見せたり言っていたりするのかと思うと少しばかり嫌になる。おれとグリーンは女と男が付き合って彼氏彼女、みたいなそんな関係なのだ。

「オーキド君さ、また告白されたんだって」

女が高い声で紡いだ言葉におれは顔をあげた。告白って、グリーンがおれに言ったような事だよね。それじゃあグリーン、女の子に好きって言われのか。へえ、人気なだけじゃなくてモテるんだ。自分が少しの不安を抱いている事に気付いて自嘲。おれはグリーンを信じてるから、大丈夫。一人で納得していると違う女が声をあげた。

「え。グリーンまた告白されたの?私もさっさと告白しようかな」

あんたいつオーキド君を呼び捨てするようになったのよ、と話を持ちかけた女がヒステリックな声を出すのを聞きつつ、おれは自分も告白しようかな、と言った女の方を見た。決して薄くはない化粧、周りの女たちと匂いは違えども一緒につけている香水、短いスカート、声の高さ、喋り方、髪型、髪の色、肌の色。全てグリーン好みではない。おれはその女を馬鹿と称し嘲笑うと、教室の扉が再びガラガラと音を立てて開いた。見覚えのある髪の色。

「なあ、レッドいる?いるよな?呼んで欲しいなー、なんて」

それはおれの幼馴染だった。それはおれの恋人だった。にやり、人の悪そうな笑みを浮かべて近くの女にそう言ったグリーンが手を合わせる。頼むよ、と声が聞こえた。こっちを向いた女の顔が赤かったのは言うまでもない。そしてレッド君、呼んでるよ。と声がしておれは立った。立ちあがった瞬間煩い程に声が飛び交っていた教室から声が聞こえなくなる。何かおれ、怖がられてる人みたい。そんな事を思いつつグリーンに控えめに手をあげながら何?と聞くと目を輝かせてにっこり笑い、遠慮もなしにずかずか教室に入ってきた。そしておれの元に来て手首を掴む。え、と声を漏らすと今日の夕飯キムチ鍋の激辛なんだけどさ、俺と姉ちゃんとじいさんじゃ激辛食べきれる自信ないからいつも通りに食べに来いよ。と言った。静かな教室につらつらと並べたてられた言葉がとても間抜けなものに聞こえておれは取り敢えずうん、とだけ言っておく事にした。いつも食べに行ってるじゃん、と言うとただ単に激辛ですよって言いたかっただけ。と笑う。おまえ辛いの好きじゃんと付け足された。

「というわけで買い物行くぞ。今日はさぼる。姉ちゃんにもじいさんにも確認取ってるし、さぼっても大丈夫だろ。おばさんも青春ね、とか言いつつ喜んでたし」
「母さんにまで確認取ったの…?ああ、うん。容易に想像つく」

手を合わせて笑っている母さんが目に浮かんで二度目の溜め息。良く見ればグリーンは教材が入っているであろうショルダーバッグを肩に掛けている。それにはイーブイだかっていうキャラクターのマスコットが付いていた。グリーンに急かされて鞄を手に取るとピカチュウのマスコットが揺れた。何が何だか分かっていないクラスメイトを冷たい目で見る。グリーンはおれのなんだよ、って視線も含めて女に目を向ければ目を逸らされた。グリーンが笑う。

「激辛のキムチ鍋があるんだから激甘のキムチ鍋があってもいいよな」

グリーンが指している激甘は砂糖的な意味での激甘だと知っているおれはそれを想像して口を手で覆うとグリーンの冗談だよ、という声が聞こえた。未だに掴まれている手首が熱くて仕方がない。

お互いのもの


◎別教室設定を上手く利用したかったのですが無理でした申し訳ない!素敵設定で書くのが楽しかったです^^





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -