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緑→赤

やあ、と片手を挙げながら無表情にリザードンに乗っているレッドの姿が窓越しに映った。慌てて窓を開けると少しばかり嬉しそうに微笑んだレッドが俺に手を伸ばす。入ってくるなら普通に玄関から入ってこいよ、と言うと別にこれも楽しいでしょ、と返事。全く、レッドには敵わないもんだ俺も。手を取り、窓から俺の部屋へと引きずりこんだ後、レッドはリザードンの頭を撫でてボールに戻した。

「珍しいじゃん、下山してくるなんて」
「就職活動でもしようかなって…」
「ええ?無理無理。あ、何ならジムで働く?」

昨日会ったばかりで懐かしさは感じられないが、こうやって家の中で話すとなれば話は別だった。何となしにジムで働く事を誘ってみると首を横に振って、おれがいたらグリーンのとこに誰も辿り着けないだろう?と言う。まあそれもそうだ。何か飲む?と聞くとレッドは少し考えた後、ココアと答えた。ちょっと待ってて、とだけ言葉を残して階段を降りるとそこにはいつもいるはずの姉ちゃんがいなくて、代わりに、テーブルに紙が置いてあった。そこには少し出掛けてくる、と主旨だけ書いてあり、姉ちゃんにココアを作ってと頼めなくなった以上自分で作るしかないと理解。棚に置いてある市販のココアパウダーの入った袋を手に取り、開けるとココア独特の甘ったるい香り。マグカップに少しのココアパウダーと砂糖を入れて、牛乳を沸かした。そして考える。これに毒入ってるって言ったらあいつ、どんな顔するんだろう。レッドは猫舌だから完全には沸騰させずに、少し温かい程度にしてマグカップに注ぐとやはり、ココア独特の香りがした。溢さないように階段を上って俺の部屋のドアを開けるとレッドが先程と変わらない体制のまま、縮こまっている。

「ん、ごめん。待った?」
「全然。寧ろおれの方がごめん」
「いや、別に大丈夫だし。温めにしといたけど」

マグカップを手渡すとレッドはゆっくりとそれに口を付ける。そして美味しい、と聞こえて俺は笑った。そして言ってみる。それ、毒入り。

「…え。ねえ、解毒剤ってあるの」
「えええ。何おまえ本気にしたの?」
「何、騙したの?グリーンが言う事だから本当だと思ったのに」

少し蒼褪めたレッドにごめん、と謝れば溜め息一つ。おれ、グリーンの言う事を何でも信じちゃうんだ、とレッドが呟いた。まさか本気で信じるとは俺も思わなかった。ああ、うん。何て言うか、はっきり言って驚きだよ。それでも尚、マグカップに口を付けたレッドを見て、俺は意地の悪い考えを思いつく。

「なあ、レッド。就職活動しに来たんだよな?」
「うん。良いところとか紹介してくるの?」

まあな、と返事。嬉しそうにレッドが笑った。心臓が煩い。もし、失敗したら冗談、と言えば済む話だ。小さく呼吸した。

「それ、俺に惚れる薬入ってるんだけどさ。俺と一緒に住まねえ?」

にやり。笑うとレッドの目が揺らぐのを確認した。

甘い毒





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