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金緑→←赤

「俺、好きなやつがいるんだ」

そう言って笑ったグリーンを見たのはいつだったろう。おれ、諦めたんだ。嬉しそうに笑って、だけど真剣な表情そのものなグリーンを見て諦めた。簡単な事じゃなかったけれど、おれにはグリーンをここまで嬉しそうに笑わせる事が到底敵わないと思ったから。小さい頃からずっと一緒でグリーンの事だったら何でも分かっている気になっていたのに、今グリーンが想いを寄せているであろう人の事なんて全く気付く事は出来なかった。涙で視界が奪われそうになる。だからおれも好きな人がいる、と言ったんだ。グリーンを忘れようと。


「…レッド?」

懐かしい声におれは振り返った。半分疑うように目を細めておれを見るグリーンはおれの記憶の中で生きているグリーンと変わっていないように思える。どうしたの、と問うとグリーンは薄く笑ってこれ、と言いながら何かがたくさん詰まったリュックをおれに差し出してみせた。

「やっぱりまだここにいたんだな。まあこんな雪の降る山に半袖でいるのはおまえしかいないと思うけど」
「これ、何?」
「食べ物。どうせまともに食ってねえんだろ?おれが見る限り随分と痩せたと思うし」

マフラーを巻きなおしながらそう言ったグリーンを見ておれは有り難う、と呟いた。グリーンの顔を良く見れば少し大人びたかもしれない。基本的には変わっていないのだけれど。おれはともかくグリーンが風邪をひかないか心配になってリザードンのボールに手を掛けるとそれに気付いたグリーンがすぐに帰るから大丈夫、と手を振った。珍しく霙になりそうだし、と付け加えられた言葉におれは降り続ける雪を見て納得する。

「金色とは、上手くやってるの」

グリーンに背を向けながら漏れた言葉に一瞬だけ沈黙が流れる。すぐに何とかやってるよ、と笑い混じりの答えが聞こえた。受け取ったリュックを腕に抱えると布地のそれに大粒の染み。ああ、霙じゃなくて雨になりそうだ。

「彼のこと、あいしてる?」
「ああ」

あの時から俺はゴールドを愛してるよ。あの時おれがおまえに呼ばれてなきゃあいつと付き合う事はなかったんだから。あはは、とグリーンが笑って小さな嗚咽。おれはリュックを抱え直した。随分と本格的な雨だ。ぽつりぽつりと頬を伝う。

「それならおれはあの時、グリーンを呼ばなきゃ良かったのかもね」







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