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雪が降っていた。何故だか半袖でその場所に立っていた僕は隣に佇んでいた黄色い生き物に対してピカチュウ、と呼びかける。嬉しそうに擦り寄ってくるピカチュウという名前らしい生物を見て思い出すのは僕がチャンピオンになったという事だった。何のチャンピオンだろうか、と考えても記憶なんて都合もよく思い出せるわけもなく。ただただ僕は寒さも感じずに雪の降るその場所に立っていた。不意に後ろからレッド、と僕の名前が聞こえて振り向くと、幼馴染のグリーンがいる。彼は苦笑いをして風邪ひくって、と言いながらコートをかけてくれた。そしてまだ下りてこねえの?と疑問を僕に投げかける。

「…まだ、足りないから」
「もう充分だろ?おまえは強いよ。ほら、帰ろうぜ」

伸ばされた手を掴んだら駄目な気がしたのは何故だろう。グリーンは僕の幼馴染で、一番信用しているはずなのに。にっこりと笑ったグリーンに寒気がした。それより僕は、何で、どうして、

「ピカチュウって、何?」

聞いた瞬間グリーンが口元を歪めたのを確認出来た。ピカチュウって何なの?僕は無意識にそれの名前を呼んだけれど、見た事も聞いた事も触った事もないんだ。ピカチュウが悲しそうに耳を垂れて鳴いた。グリーンは面白そうに笑った。そういえば僕は一体何が足りないっていうんだろう。どうして僕はここにいるんだ。

「やっと気付いたわけ?人間世界の回想は楽しかったかい?何度でも魅せてあげるよ」
「何、を」

これが地獄さ、と両手を広げてグリーンは声高らかに笑った。僕の身体が、手が、溶けて融けて解けて、世界さえもどろどろに。グリーンが言う。死んで記憶を失くしても、おまえはまだ囚われているのだと。死んだ。ああ、そうか僕は死んだんだ。ところで君は誰?グリーンじゃないんだ、僕の大好きなグリーンじゃないんだよ。グリーンの皮を被った誰か、が融けて再び人を形作る。なんて奇妙。これは僕に与えられた罪。再び僕が本物のグリーンと出会えるのは多大なる年月が必要なのか。グリーン、僕はここだよ会いたいよ。何度これを繰り返せば君に会えるのか。君も早く死んで、僕と一緒に罪を受けてくれる時をいつまでも待つよ。僕は、どうやら化かされていたようだ

はじめましてと久し振り!獄卒と申します





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