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ねえ、グリーン。おれ、スノーグローブが欲しい。
久し振りに聞いたレッドの声を耳に響かせながら俺は少しばかり考えた。スノーグローブ、所謂スノードームってやつか。…何で?あれってクリスマスとかのやつで、クリスマスが終わったこの時期に買うもんじゃねーだろ。いや、まだ寒いには寒いし雪は降ってるけどさ。レッドの方に視線を戻せば期待の籠った目で俺を見ている。これは、買うしか、ないんじゃないだろうか。金あったかなー。ていうか売ってんの。

「そんなに欲しいなら買ってやるけど」
「…ピカチュウの」
「ああ。だったら売ってそうだな。買いに行くか」

準備しろよ。そう言うと目を何度か瞬きさせた後、うん。と頷き近くに掛けてあるマフラーに手を伸ばした。こいつ、マフラーだけで行く気か。んな事したら雪が降ってるこの季節、風邪ひいちまう。マフラーをぐるぐる巻きにしたレッドは本気でマフラーだけで行く気だったらしくて、早く。と俺の袖を引っ張って急かした。苦笑いしてちょっと待て、と言いつつ放ってあるコートをレッドにも渡す。色違い、だった。グリーンの色だね、とレッドが買った記憶は真新しい。俺も俺でレッド、要するに赤色のコートを買ったわけなんだが。俺たち二人して何なんだか。留守番頼むな。ソファーで寛いでいたイーブイとピカチュウに言うと元気な鳴き声が聞こえた。外に出ると案の定寒くて、レッドがポケットに手を突っ込みつつリザードンで行く?と聞いてくる。

「いや、おまえ歩いてこーぜ。リザードンが可哀想だろ」
「…グリーンが言うなら」
「ていうか何でスノードーム欲しいんだよ」

俺もレッドの真似をしてポケットに手を突っ込んだ。すぐに暖かいってわけじゃあないが気休め程度にはなる。レッドは考えているのか考えていないのか良く分からない表情をして、(無表情って言った方が早い)おれとグリーンの関係に似てるから、と呟いた。似てる、か?というか全然似てるっていうあれが思い浮かばないんだが。どこが、と聞き返すとゆるゆる笑って繰り返し遊べて飽きないところと言う。あれって遊ぶものだったか。まあレッドにとっては遊ぶものなんだろうな。

「あれって水が入ってるから綺麗に見えるんだろ?」
「うん。だから雪が降ってるように見える」
「で、どこが似てるって?」
「…自分で考えろばか」

俺の頬に冷たい両手を添えてレッドは耳元でそう囁いた。馬鹿ってなんだ馬鹿って。ねえ早く。ピカチュウとイーブイ待たせる事になるよ。無表情で言ったレッド頭を軽く叩いてやると恨みがましい目で見られる。あー、何。こういうのが似てるっていうわけ?全然分かんねーけどさ。レッドの例えっていつも意味不明なものばかりなんだよ。最終的には俺も雰囲気で分かるんだけど。俺、偉くねえ?くすくす笑うとレッドも笑う。ポケットに突っ込んでおいた手はもう充分に暖かくなっていた。スノードーム。それもピカチュウの売ってるかなあ。人気すぎてなかったりして。その時はジムリーダーの特権フルに使ってやるつもりだけど。レッドが嬉しそうに踏みつけた雪は足跡という形で確実に俺から遠退いていく。なあ、レッド。おまえと俺がスノードームのような関係なら一生離れられないって事でいいよな。だってさあ、俺たちは水の中なんだ。依存するものはお互いしかない。良い関係に例えてくれるじゃねーの。俺の前を歩いていたレッドがこっちを向いて早く、とまた急かす。今日は随分とお喋りだ。

スノードームの関係
(それは純か歪か)





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