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前世パロ

夢を見た。それはもう頭を抱えたくなったり吐き気が込み上げてきたりする程の現実味など帯びていない夢。勢いよくベッドから身体を起こせば僅かにシーツが濡れているのが確認出来た。本当に気持ち悪い夢だったのだ、あれは。鮮明に脳裏に焼きついている事実を忌まわしく思いながら再び目を閉じると嫌でも思い出す。何をやっているんだ、俺は。

何故置いて往かれるのですか  様、と呟くようにし俺の名を呼んだのはルビーを双眸に埋め込んだかのような赤い目を持った少年だった。白い肌を引き立てるかのような艶やかな黒い髪。一つ一つの仕草が綺麗で、見惚れてしまう程の。見た事もないはずの少年の名を俺は優しく呼び、白い肌に手を添える。眼球が濡れている事に気付いて俺は苦笑いしながら少年を抱き締めた。

「置いてなど、往きはしない。必ず戻ってくると誓おう」
「上辺だけの言葉は要りませぬ。必ず、など誓えはしないのです」
「それならば、どうすれば良いというのか」

少年は俺の胸に顔を埋めながら言った。お戻りになられましたら傷の手当てをわたくしめにさせては頂けないでしょうか、と。俺は再び笑って頼めるか、と言った。そして夢は巡る。次に見た夢の光景は何ともいえない、それこそが気持ちの悪い夢だった。吐き気を催す、血生臭い夢。汗だと思って拭ったそれは血以外には見えなくて、それと同時に赤い目を持った少年を思い出した。もう二度と、少年に会う事は出来ぬのだと理解した。そして世界が暗転して、

「いや別に思い出さなくても良かっただろうによ…」

頭を抱えている現在の俺に至る。不思議な事に俺は手早く着替えて何故か図書館に来ているという謎だ。普段は行く事のない図書館。何を血迷ったのだろうか、俺。取り敢えず近くにある本を手に取って久し振りに本というものを読んで見ようと思った時だった。目の端に何かが見えた。俺の印象に深く刻まれていたそれ。黒い髪に白い肌。何よりも印象に残った赤い目。着ているものは当たり前に違うといえ、他は夢で見た少年と酷似している。少年も俺を見ていた。驚いた表情をしていた少年は一瞬で無表情に変わり、俺に近付いてくる。足音も立てずに近付いてくる少年に俺は少しばかりの恐怖を抱いた。蛇に睨まれた蛙のように俺は動けない。俺と少し間を取って足を止めた少年は少し微笑んで緩やかにお辞儀。夢で見たように一つ一つの仕草が綺麗な少年。そして次に驚くのは俺だった。

「お久し振りです、緑様。再び会って、こうやって話す事が出来て嬉しく思います」

昔に死んだ僕と君





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