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グリーンさんとキスしました。笑いながらそう言うとレッドさんは無表情の顔に嫉妬と絶望を貼りつけて崩れ落ちる。そして苦しそうに胸に手を当てて息を不規則に吐いた。羨ましいでしょ?と言えば息を上手く吐けない所為か、それとも事実に衝撃を受けた所為か目に水を溜めて俺の事を睨みつけ、小さく呟いた。死ね、と。

「死ね、って酷いですよ」

レッドさんの前に立ち、屈みこんで目線を合わせると胸倉を掴まれ引き寄せられる。互いの顔との間が僅か数センチ。血のような、燃えるような赤い目に俺は恐怖を覚えた。吸いこまれそうなその目には純粋な殺意のような感情も窺い知れる。目は口ほどにものを言う、とは良く言ったものだ。

「ああ、そうそう。舌を噛まれる前に噛んであげました」
「…グリーンの、舌を?」

それ以外になにがあるんですか、と胸倉を掴んでいるレッドさんの手を叩き、少しばかり後ろに下がりながら言えばレッドさんは溜め息を一つ吐いて無表情に戻る。あれ、予想外だな。俺はもう少し怒り狂うのかと思ったんだけれど。

「シルシ、ってやつです」
「頭おかしいよ。…それはおれもか」

自嘲気味に笑ってレッドさんは再び俺を引き寄せた。ねえグリーンの血、頂戴と恐ろしい事を言ってみせながら。どうやってグリーンさんの血を与えろというのか。それなら本人に貰えばいいだろうに。きっとグリーンさんなら喜んでレッドさんに差し出すであろう。考えていると唐突に視界が遮られた。何も、見えない。目の付近に柔らかい感触。レッドさんの手だと気付いた俺は何するんだ、と声をあげようとする。その前に口さえも塞がれて、塞がれて?

「君、本当に舌噛んだの?血の味なんてしなかった」

当たり前だ、と言いたくなった俺は今自分が何をされたのか理解できずにいる。あの感触はグリーンさんとキスした時と同じだった。即ち、俺は、レッドさんと、キスを、した、という事になるのだろうか。俺とキスをした理由がいまいち掴めなくて、驚きも隠さずにレッドさんを見ると不快そうに唇を擦っている姿が目に映った。そして俺を見、

「その口でグリーンにキスしてきなよ。それと、おれなりの間接キスって言っといて」

この世界全てが歪んでいるのではないか、と錯覚した瞬間だった。

故に彼は美しい
気高き頂点の歪み






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