次の日から、十さんと私たちの空き時間が被ったときは、十さんが特訓してくださった。水を自由自在に操ることができる彼は、攻守ともに巧としか言いようがない抜群のコントロールで私たちを翻弄した。得意のシャドーボールは水の壁にいともたやすく防がれてしまうし、かと思えば水鉄砲がピンポイントで連続的に襲ってくる。小さな的に最大の力を込めた謂わば攻撃力の塊は、小さい粒だって思えないような威力で、一撃で壁に穴を開ける。水の脅威を具現化したような十さんに、私たちは為す術もなくただがむしゃらに、ボロボロになるまで立ち向かうことしかできなかった。

「十さん、強いな…」
「ああ。…でもあれが、特級最弱の強さなんだよな」
聳え立つ特級の壁。1番小さな壁さえも、今の私たちでは越えられない。中級風情が何を大口叩いてんだって嘲笑われるかもしれないけれど、でも、私達はそこに行きたいんだ。

「壱さんは、どれだけ強かったんだろうね」

幼いころ、とてもお世話になった、壱さん。古代の1を背負う彼は、王様を除くと、実質このブイオモンドで最強。今彼が何をしているのか、それは全くわからない。完全に閉ざされた国の秘密に関わる任務をこなしているのだと聞く。そんな壱さんの素顔を知っているのは、おそらく同世代では私とノーテだけ。私達が特級を目指す理由は彼にある。もう一度、壱さんに会いたい。会って何をするのかは決めてないけど、たくさんの感謝を伝えるために、もう一度、胸を張って彼の前に立てる自分たちになりたいのだ。

「ノーテ、修行しよ」

そう簡単に諦められない。強くなるんだ

prev|next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -