毎回毎回怒られすぎて、さすがにそろそろいつもよりは丁寧に仕上げなければならないと、気合を入れて書いた報告書を、本部受付にて提出し、帰路につく。
ノーテとヤグルマの事件について作戦会議じみたことをやってみるけど、戦闘知識を得意とする私たちがそういうことを思案したところで、頭がショートするのにそんなに時間はかからなかった。思い立ったら即行動型の私たちに、じっくり考えるのはやはり合わない。将来ポリスになることはありえないだろうな、なんて思考回路はあっちむいてほい。

すると突然、コンコンと、意識を戻すかのように寮の部屋の扉がノックされた。
駆け足で応対すると、そこには見たことのない男性が立っていた。
「初めまして。きみたちが、チアロとノーテだな。」
人に名を尋ねる時はまず自分からというけれど、相手が一方的にこちらの名前を知っていた時はどうすればいいのだろう。
「俺は十。特級Tムーロだ。」
正解は、相手が勝手に名乗ってくれるのを待てばいいのだ。
「種族はカメックス。十はコードネームだが、そちらで呼んでほしい。」
十さんは、そう言って静かに笑った。

特級ムーロには、段階によってそれぞれコードネームが与えられる。特級Tムーロなら数字、Uならアルファベット。Vは全てが謎なのでわかりかねるが、特級ムーロは各段階十人までと、少人数ながら定員が決まっていて、その中でランクの競い合いがあり、例外的に同率もあるが、基本は上級ムーロが下克上を果たせば、特級から上級に成り下がる者も出てくる、完全実力主義の世界である。
十、は、特級の中で最も低いランクではあるが、十さんの風貌からはもっと大きな力が感じられる気がした。

十さんは、最近中級Vムーロになったばかりの私たちに、上級ムーロに昇級する気があるのなら、教育係になってくれると言ってくれた。もちろん特級を目指す私たちにとってそれは至極当たり前のことで。二人揃って大きく頷けば、十さんは嬉しそうに、けれど何処か悲しそうに微笑んで、頭を撫でてくれた。
中級Vムーロになると、できるようになることがある。
それは、個人行動。時たま行われる小隊編成での任務の際、率先して個人行動をすることが可能なのだ。個人任務も徐々に増える。まだ二人でしか戦ったことのない私たちにとってそれは苦難でしかない。二人で一つ、をモットーに困難に打ち勝ってきた私たちには、到底考えられないことだった。しかし、特級を目指す上でそれは避けては通れない道で、十さんに、個人技の稽古をつけてもらうのは、必須だった。

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