任務を終えて、帰り道に歩きながら書いたガタガタ文字の報告書を本部で提出して、怒られたのでその場で書き直させられてから、ようやっと私たちペアのの寮、月の芽寮に帰った。
私たちの上司はそういうところに厳しい。


月の芽量での私たちの部屋は、同室。
いわゆるルームシェアというやつだ。
男女のいざこざはないのかと聞かれると、寮内で完全にあり得ないとは否定できないけれど、ペアで同室なのはもはや習慣というか、当たり前のことなので、双方全く気にならない。
おかげさまで、ペアで恋人になるとかはこれまでのムーロたちの中でもよくよくある話だった。
学生時代、将来的にムーロとなるペアを決める時にはそういったことも考慮して決める人もいるみたい。

「うおー…疲れたー…」
「チアロが大丈夫って言うからそのまま提出したのにやっぱり書き直しくらったじゃねえか」
「あはー!めんごめんごー!それよりお風呂いこーよ!遅いから貸し切り貸し切り!」
「どうしてお前はそう…もういいや」

私のマイペースさはわりと巷で有名で、ペアのノーテは私が隣にいるとなぜか街の人から餞別だとパンなりお菓子なり貰っている。ずるいよなー。私も欲しい。

ちなみにお風呂は銭湯みたいな広いお風呂で、寮生共同、男女別に、それぞれ入りたい時間に入ることができる。
少し前まで配属していた、1つ下のランク・下級ブイオムーロの寮、月の種寮のお風呂は時間に規制があって大変だった。
1人15分しか時間が与えられない時もあって、あれはムーロとしての第一の試練だと思う。
1つ上のランク・上級ブイオムーロになると入れる月の花寮には、個室にバスルームがあったっけな。

広いお風呂でお湯にゆっくり浸かって、疲れた身体をほぐしていく。
頭の中で、今日のシャドーボールは上手く打てたからあとは威力だな、とか、すぐそこまで迫ってきた中級U昇級試験の内容はどんなものかな、とか、気持ちの余裕ができてくると、色々なことが頭に浮かんでは消えていった。
今の調子なら昇級試験はほぼ間違いなく合格と言っていい。
内申点をかなり稼いでるのもあるし、私たちのペアの一体感はそこらのペアとは一味違うと自負しているし、周りもそれは認めてくれている。

そうなると、いずれ上級ブイオムーロへの昇級試験も受けなければならなくなる。だか、二人で一つをモットーにしている私たちにとっては、個別行動が増える上級ブイオムーロはあまり好ましくないのだ。ランクが中級Tの分際で、と思われるかもしれないが、私たちが二人力を合わせれば、そのレベルまで達するのだから仕方が無い。

「やめだやめだ。まずは中級U昇級試験!!」
辛気臭いことを考えるのはその時になってからだ。今はただ目の前のことに集中しよう。先生のお墨付きなのに昇級できませんでした、とかなったらたまったもんじゃないしね!

今日はいい夢見るぞー!なんて決意しながらその日は寝たものだから、
次の日の朝、そう、昇級試験が終わり、結果を待つ、今。
目の前で起こっていることが心底信じられないのだ。

ノーテの手に収まっている小綺麗な分厚めの紙には、中級Vブイオムーロに昇格した、と書いてあるのだから。
「「まさかの飛び級…」」

そんなこんなで、月の芽寮でも最上階にある、今までより少し広い部屋にお引越し。
今日、ここから、私たちの新しい運び屋生活が幕を開けるのだ。


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