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慎重派の彼が壊れるとき 2

驚いた。
こんな時間に彼が訪ねてくるだなんて初めてだ。

明日会えるのを凄く凄く楽しみにしていたのにな。
任務ならしょうがない。
それに彼は私に任務内容を漏らすような事は決してないけれど、恐らくは危険な任務なのだと思う。
だから、きっと会いに来た。
こんな真夜中に訪ねて来たのだ。

2ヶ月か。
長いな。淋しいよ。
それに何より怖い。
先月、2週間程の任務に彼は出た。
その時ですら不安で胸が押し潰されそうになったというのに。
たまに怪我して帰ってくるし…。
きっとこの先の二か月、私は心配でたまらなくて気が気じゃないだろう。

「……無事に帰って来てくださいね。」
「ああ、約束するよ。」

私の声は自分が思っているよりも少し震えて出た。
不安で動揺している。

「本当に一目名前の顔を見たかっただけなんだ。じゃあ、行くよ。」

もう行っちゃうの?
やだ、いやだ、ほんのもう少しだけ。

明日会えるのを私、本当に楽しみにしていて……
彼と唇を合わせることも。
それが、2ヶ月だよ?
不安で苦しい。

ただ立ちすくむ私に彼は背を向けてドアノブに手をかけた。
本当に行っちゃう。
任務と私どっちが大事?なんてことは思っているわけではないし、まさか言うような女じゃないけれど。でも、せめて……

「キスして。」

気付けば、私は彼のベストの裾を引っ張り口から声がついて出ていた。

「お願い。会えない間の分が欲しいの。」

私の頭の片隅で冷静なもう一人の自分の声が聞こえる。

“困らせちゃ駄目。今からきっと大変な任務なのだから、気丈に見送るべきでしょ?”

彼はドアノブに手をかけたままピクリとも動かない。
ほら困ってる。
でも、私の心は言うことを聞かなくて……

「……お願い。」

私はベストを引っ張っていた手を離した。
そして、後ろから彼の背中にぎゅっと抱き付いていた。

「キスして。」

貴方の唇で私の心に空いた穴を塞いで欲しい。

―――

僕は自分の中に生まれた欲望を押さえ込み、名前に背を向けて玄関のドアノブに手をかけた。
すると彼女は僕のベストの裾を引っ張り思わず耳を疑うような発言をしたのだ。

「キスして。」

え?
耳にたどり着いた言葉の意味を僕の頭はなかなか上手く呑み込めなかった。
僕の聞き間違いでなければ、彼女は……

名前は苦しそうにまた言葉を紡いだ。

「お願い。会えない間の分が欲しいの。」

急に周りの空気が薄くなったような気がした。
頭がクラクラする。
聞き間違いなんかじゃないんだ。
君からこんな言葉がでるなんて。

でも、駄目だ。今の僕をあまり刺激しないほうがいい。

いや、もしかして名前も同じ気持ち?
自分の中の煮えたぎる熱が切羽詰まっていく。

いや違う。
きっと彼女はキスまでを望んでいるだけだ。

君のことを大切にしたい
いつだってそう思っているけれど、その気持ちの裏に僕はいつだって性急に身体を繋げてしまい欲望をひた隠しにしていて。
今、その気持ちが溢れ出しそうなんだ。
だから、刺激しないで。

扉と向き合ったまま、動けなかった。
彼女と向き合うことも扉を開けることもできない。

キスしたい。
名前の唇を味わいたい。いや、違う。
君のすべてを心ゆくまで堪能したい。

きっと僕が今何を考えているかなんて君はちっともわかっていないのだろう?
だからこそ駄目だ。
唇は合わせない方がいい。
欲望を抑えるよう、なんとか自制心を奮い立たせる。

すると彼女は今にも爆発しそうな僕に追い打ちをかけてきた。

「……お願い。」

そして僕の背中に抱きついてきたのだ。
彼女の柔らかな膨らみを背中に感じる。

自分の中の沸々と湧いて上がる欲望を抑えるように、目をきつく閉じた。

これ以上、刺激しないでおくれ。
いつものちょっと余裕ぶった顔なんてできそうにないんだ。

「……お願い。」

駄目だ。
頭が上手く働かない。
酸欠で倒れそうだ

「キスして。」

…駄目だよ。

だから、駄目だってば!


僕の中でタガが外れた。
ずっと我慢していた。
君が欲しくてたまらなくて、でも、怖がらせたくも、傷付けたくもない。
彼女のことがたまらなく大切だから、いつもガラス細工を扱うかのように丁寧に触れてきた。
少しずつ僕に近づいて来てくれる名前を待てばいいんだって思って。

でも、彼女が近付けば近づくほど、僕は切羽詰まってきていて。
もう少しで彼女はきっと追いついてくれる。
そう、あと少しの辛抱だ。

でも、僕はもう待てない。

………限界だ。

僕は身体に回された彼女の細い腕を掴むと勢い良く振り返り、そのまま、ガッチリと手で彼女の頭を固定し唇に食らいついた。
いつもみたいに彼女の反応を確かめながらなんてできない。
そして、壁へとおいやり、逃げ場をなくしていく。

名前は僕のいつもとは違う荒々しい行動に驚いてか身体を強張らせたけれど、そんなのおかまいなしだ。
だって挑発したのは君だよ。
責任は取ってもらわないと困る。

欲望のままに口内を舌でかき乱す。
とにかく本能のままに味わいたい。
そして、早くも硬く反り返ってしまった僕の中心を彼女の身体にグイと押し付けた。
名前の肩が震えた。
知らなかっただろう?
君とのキスで僕はあっという間に熱を持ってしまうんだ。
ずっと気づかれないようにって配慮していたけど、本当は……この硬く主張する雄を君に知らしめたかった。
もう余裕なんて微塵のかけらもないんだって。

僕は唇を一度離した。
君は顔を真っ赤に染めて僕のことを信じられないものでも見るかのように固まっていた。
もう後に引けやしない。
唇を離したのは、行為を止めようと思ってじゃない。
もっともっと君にしたいことがあるから。
君が悪いんだからね、僕の欲を満たしてよ。

名前の白い首筋に唇を寄せキツく吸い上げた。
ずっと、この細くて透明感のあるここに赤い花を咲かせたいって思っていた。
唇を少しずつ下へとずらし、たくさんの朱印を残していく。

そして、僕の手は彼女のパジャマのボタンを外し、キャミを捲り上げ、手のひらで膨らみを包み力強く円を描くように揉みしだく。
そう、ここも、ずっと触れたくて仕方がなかった。
この柔らかさを僕の手で様々なカタチにしたいってずっと考えてた。

彼女はピクリとも動かない。
身体を硬直させ、僕にされるがまま。

僕は彼女の胸の柔らかさを確かめるのが手だけじゃ物足りなくて、自分の頬を寄せた。
ああ、ずっとこうして感じたかった。
暖かくて柔らかなこの膨らみは僕のものだ。
他の誰にも渡しやしない。

そして、彼女の赤い胸の先端を口に含みチロチロと舌先で転がす。すると、柔らかかったその突起はだんだんと硬度を持っていく。
名前は僕から与えられる行為にただ耐えるようにギュッと硬く目を閉じ、唇をつぐんでいた。

なんだい、それ。
そんなに嫌なんだ。
僕はこんなに君が欲しくてたまらないってのにさ。
君のその拒絶するかのような表情は僕をさらに追い詰めて君をもっと苛めたくさせるんだよ。

僕は手を彼女のショーツへと進めた。
すると、名前はギュッと太腿を閉じあわせて、やっと口を開いた。

「…ヤ、ヤマトさん、待って。」
「もう待てないよ。」

ずっと待ってたよ。長いこと。もう充分だろう?
それに、抵抗なんて許さない。
誘ったのは君じゃないか。

無理やり自分の足を彼女の足に割り入れて、隙間を作る。
そしてその隙に、下着越しに割れ目をなぞった。

「…え、……ひゃっ……!」

布越しだけれど、わかる。濡れてる。

「ヤマトさん…お、おねがいだから、待って……」
「嫌だね。」

拒絶の言葉なんて聞きたくない。
僕はもう一度唇で唇を塞いだ。
下着をずらし、彼女の愛液を絡め取ってから敏感な赤い実を擦る。

「……ん……んん。」

塞いだ口からはくぐもった声が漏れた。
拒絶?それとも快楽?どっち?
もうそんなのどうでもいい。

そして、僕は彼女の蜜坪へと指を沈めた。
僕の胸元を彼女の手は叩いてきたけれど、無視。そんな力でびくつくような男じゃない。
彼女の弱いところを探すように中を探っていけば、一つのところで名前はビクリと身体が震えた。

ここだね。見つけた。
執拗に攻め立てたい。
彼女が快楽のことしか考えられないようにしてしまいたい。

そして、僕のこの盛った雄を彼女の中に何度も突き上げるんだ。
何度も何度も朝まで、君の身体を離さずに……

そう、何度も……朝まで……


いや、待て。
朝まで?

じゃない!!!
今から任務だろ!!!!

途端に我に返って名前の身体をぱっと離した。
すると、名前はずるずると力なく床にペタリと座り込んだ。
彼女の頬は上気しており、涙ぐんだ瞳は驚きと戸惑いをあらわに見開かれて僕を一度見上げると、すぐに目を逸らされた。
そして、はだけた胸元をおさえている。

え、あ、あれ
なんだこの現状は

頭が上手く回らない。

泣きそうな彼女
乱れた衣服
僕の妄想?夢の中?

思わず僕は自分の頬を撫でた。
そうだ、さっき、彼女の胸の柔らかさをここで感じた。
そして、自分の反対の手を見た。
まだ生々しく彼女の中を弄った感覚が残っている……

ああ、そうだ
僕は彼女を……………
襲っちゃいそうだ、とか、襲いたい、とか何度も思ってきたけど、その熱はずっと自分の中だけで留めていたのに…
なんてことを!

「ご、ごめん。その、……。僕、ご、ごめん。」
「…………。」

名前は自分で自分の身体を抱き寄せ小さくなって固まったままだ。

どうしよう
どうしよう
どうしたらいい?

頭ん中が真っ白だ

というか、やばい。任務!遅れる!

「ごめん。……本当にごめん。い、いってきます。」
「…………。」
「…ごめん。ごめん。」

僕は玄関に座り込んだままの名前を残して、家から飛び出た。

どうしよう。
どうしたらいいんだ。

今はとにかく任務に向かうしかないのだけれど、こんなことするつもりじゃなかったんだ。

門まで走りながら、キリキリと痛む胸を抑えた。
君を襲うために訪ねたわけじゃなかった

ずっと我慢してきたのに。
最悪だ。
もう泣きそう。

苦しい。
罪悪感で胸が張り裂けてしまいそうだ。
上手く息ができやしないよ。
彼女はもう僕に笑いかけてくれることはないのかもしれない。

ずっと大切にしてきたのに。
いつか君と心と身体が合わさった幸せな夜を過ごしたいって思っていたのに………

最悪だ。

つづく