よく効くお薬
「あれ、ヤマトの手首ちょっと腫れてない?どうしたの。」
「実は今日ヘマしちゃって…恥ずかしいな。」
同棲中の彼女名前は心配性。凄く優しい子なんだ。
そんなとこに惚れた。
「大丈夫?病院は行った?」
「いや、もう夜遅いし明日の朝一で行くつもりだよ。たいした怪我じゃないしね。」
「そう…軽症とはいえよく使う箇所だし、すぐに治るといいのだけれど。けっこう痛い?」
「まぁ少し。」
すると彼女は僕の左手首に優しく手をかざした。
もしかして治してくれるの?医療忍術は使えないと思ってたけど知らない間に習得してたのかな。
すると、真剣な表情をした彼女はそっと手首を撫でて口を開いたのだ。
「いたいのいたいの、飛んでいけー!」
「…え?」
これって親が子供によくするヤツだよね。
まさか三十路も手前になって人生で初めてしてもらうとは…
でも、悪くない。というか不思議と痛いのが和らぐ気がする。気のせいなのはわかってるけど。
それに、子供扱いされた気恥ずかしさと暖かさが胸いっぱいに広かったのは紛れもない事実。
こんなふとした時に思う。
まっすぐで素直な名前は僕が幼い頃から求めていたぬくもりをくれる。
そう、どんな高度な医療忍術より君の言葉は僕の過去を癒やすんだ。
「名前、もう一回してくれるかい?」
「はいはーい。いたいのいたいの飛んでいけ!」
「もう一度お願いするよ。」
「よし、任せて!いたいのいたいの飛んでいけー!!」
「もう一度。」
「…ヤマトそんなに痛いの?今から急患で見てもらいに行く?心配だし付き添うよ。」
「…いや、そういう訳ではなくて。」
心配そうに見つめてくる瞳からは僕を気遣う想いが滲み出ている。対象的にこちらの顔は幸せで締りのない顔をしてるんだろうな。
“好き”って気持ちが溢れて仕方なくて、彼女の身体を引き寄せ首筋に顔を埋めた。すると首にかかる僕の息にこそばゆそうに身をよじらす名前。
「名前、ずっと僕の傍にいてね。」
「え、あ、うん。もちろん。…どうしたの急に?」
君は知らないんだろうな。
どれだけ僕が救われてるかを。
おしまい
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ゆう様がこのお話の絵を描いてくださいました。是非、ご覧ください(^^)
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