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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -


欠乏症


「わー!ヤマトだぁ!会いたかった!お疲れ様!すっごく淋しかった!」
「え!?うわっ!!僕のベストかなり埃っぽいから、そんなに顔をスリスリしたら汚れちゃうよ!」
「そんなのどうでもいいよ。ヤマトの匂いだ……ちょっと、いやかなり汗臭いけど、それもまたいい。んー!たまんない。無事に帰って来てよかったぁ……。」

長期任務から帰ってくるなり彼女からの熱い抱擁。玄関でサンダルも脱がぬまま名前に抱きしめられた。

「ヤマトに会いたくてたまらなくてヤマト欠乏症になっちゃうとこだった。」
「なんだいそれ?」

「えっとねぇ……まずは手足と全身が震えてくるでしょ。あと嘔吐、血圧の上昇…」
「それはアル中じゃ…」
「黙って。例えばの話よ、例えば。とにかく!ヤマトに会いたくてたまらなかったってこと。ヤマトは?私に会いたくなかった?」
「そりゃあ、まあ……。」

僕の煮え切らない返事に名前は少しばかり不服そうな顔をした。
僕は君ほど愛情表現が多彩じゃないんだ。
どうして君は呼吸するかの如くサラサラとそんな言葉を吐けるんだい?

「無理しなくていいよ。ヤマトが口下手なのは心得てる。だから、身体で教えて?ね?」

なるほど。そう来るのか。
それは得意分野だ。

「了解。任せて。」

名前のおでこに僕のおでこをコツンと付けてそう言うと彼女はこちらがこそばゆくなるほどの笑顔をこぼした。

ーーー

ベットの中で僕の腕にすっぽり納まる君を見て思う。
君がいつも太陽みたいに笑うから、気付いたら僕の心が暖かい色に染まっていくって。

「ヤマトは私とどうして付き合ってくれたの?」
「…さぁ。」

気付いたら君のことばっかり考えてて、どこにいても何を見ても君の姿を探してるし、飲み会で名前の横に座ったカカシ先輩に嫉妬してたり。

でも、一つ言えることは君を失ったら僕の日々はモノトーンになる。とてもつまらなくて殺風景な世界になるだろうってこと。

君を欠かすことができないのは僕の方だよ。

おしまい

2019.2.7

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