※雄英卒業後
※同棲でもお泊りでもお好きに想像してくださいませ




意識は起きているけれど、起き上がりたくなくて目は閉じたままでいた。せっかくの休日なのだからもう少し微睡んでいたいと目を開けないつもりだったけれど、そうもいかない感覚のせいで目を開けて状況を確認しなければと思い至ったところだった。

二度寝を決め込もうにも、薄っぺらいシャツ越しに乳房の中心と、下腹部を撫で回されているような感覚のせいでとても出来なかった。というかこれはその……入ってるんではないだろうか。身に覚えのありすぎる圧迫感と、それに呼応するみたいに疼く胎内がそれを証明していた。
観念して瞼を上げれば、そのような感覚の数々が気の所為ではないことが証明される。何故なら隣に寝ていたはずの彼がわたしに跨って見下ろしていたからだ。

「おはよ、よく寝れた?」

朝日による逆光で目を開けきれないわたしなんかよりよっぽど眩しそうな顔をして、その「彼」が唇を寄せてくる。わたしは彼に身体を(まさぐ)られたせいで起きたというのに、寝れたかなんてよく訊けたものだ。下着だって履いてたはずなのにどこやったの、ねぇ電気くん。

「電気に起こされた」
「ん、起きてくんねぇかなって思ってたもんね」
「二度寝したかったんだけど……」
「しょーがねぇだろ、朝勃ち収まんねぇんだから」
「最低すぎる」

つまり朝のそれを収めるためだけにわたしの幸福な睡眠は妨害されたのである。……と、こんな言い方をしてみたけれど、身体がしっかりとそれを受け入れるような反応をしている以上なにも言えなくなった。

「それに、なんだかんだなまえちゃんも好きっしょ?」

電気もそれを解っていることがいちばん、タチが悪い。
その問いに肯定の返事をする代わりに先程からなんの抵抗もなくわたしの身体が電気のことを受け入れていて、押し上げてくるものを締め付ける。奥にハマり込んだそれは膣壁のあらゆる箇所を刺激して、先程まで寝ていたのが嘘のように目が覚めた。

「ん、っ……」
「ほら、なまえも結局ノリ気じゃね?」
「うるさ、あっ、!」
「っへへ、かーあいい」

起き抜けすぐに可愛らしく喘ぐなんて出来なかったのだけど、どういうわけか電気には可愛く聞こえたらしく誂うように笑った。と同時に既に最奥へ辿り着いているものと思っていた先端がぐっと押し付けられて声が上がる。

「あーすげ、きもちいい……朝勃ちえっち最高……」

惚けたような声でひどい独り言が誰に向けてでもなく耳元で聞こえた。それから両腕をわたしの背中に回すと起き上がらせるので、電気の後ろに見えるものが天井ではなく、電気の趣味で少々派手に飾り立てられた壁となる。

「なあ、見える? 入ってるとこ」
「……っ、んゃ、あ」

下を向けば剥き出しでこそないものの繋がっていることがわかって、腹の皮膚がヒクつく。更にゆったりとした摩擦が淫気を誘い、嬌声が上がった。
上半身だけ着たままになっていたわたしの部屋着を電気がたくし上げ、乳房を両手で揉み、指先で弄ぶ。それから首元にかかる彼の息遣いが殊更身体を熱くさせた。

「あ、っ……」
「脱がしてい?」
「っ、自分で、脱ぐ……から」

答えながら完全に裸となると、「おっぱい揺れてる」と笑いながら電気の手は相も変わらず胸を揉みしだいていた。朝からなんて淫靡なんだろう。自らの吐く息の熱さに驚きながら、ひたすらに身体を揺らされると同時に迫りくる快楽を受け止めていた。

「はぁ、あ、んん……、っ!」
「なまえちゅーしよ、ね」

すこし大きく開いた口から覗かせてくる、電気の舌の生々しい紅さと厚さにわたしはたまらず吸い付いた。ちゅるりとわたしから舌先を吸うとそれに負けじと電気の舌がわたしの口腔を丹念に撫で回すことで(もたら)される刺激に腰がビクついた。
触れ合っている全ての粘膜が潤みを増している感覚がある。ひどく遠くから、それこそ雷鳴が近づいてくるみたいに絶頂を迎える予感が迫ってくる。わたしの腰許をねじ伏せてくる掌からだって似た温度を感じた。舌を噛んでしまわないようにできるだけ力を抜いてその時をただただ待つ。

「んん、っふ、くるし、ぁ、っ」
「もーちょいがんばって……、! 」

嬌声の合間に先程まで憎まれ口を叩いていたはずの口が素直でに電気の名前を呼び、好きだと零す。強い快感に反応して媚肉が彼のそれを締め上げ、身体がべつの生き物みたいに仰け反る。「……っ、やば」と焦りの見える表情で眉を寄せる電気を見たのを最後に目をぎゅっと瞑った。蠕動する膣壁に呼応するみたいに中で彼の肉杭が揺れ動いて、ダメ押しとばかりに最後に更に先へと潜りこんで放精した。


そうして全てが終わり、電気が深く息をするとわたしの肩へ顔を埋めて、髪を撫でる。普段から甘ったれな彼がこうしてわたしに凭れ掛かることは珍しくないが、朝っぱらからこうしていると本当に1日中このまま過ごしてしまう気がして、心を鬼にして彼の腰元から降りた。
そんなわたしに対して不満げに唇を尖らせるくせに切り替えは早く、ベッドサイドからティッシュを取り出し始めた。前にお掃除なんちゃら的なことしようとしたら断られたなあ、とぼんやり思い出しながら、いつの間にやら箱ごと眼前に突き出されたティッシュを拝借した。

何かを言いたげなわたしの視線に気付いた電気は、「言っとくけど、寝ぼけて先にちんちん触ってきたのそっちだから!」と言い訳してその辺に脱ぎ捨てられたグレーのスウェットをパンツだけひったくってベッドを降りていく。朝っぱらからこんなことになったのが不満、という視線だと勘違いしたらしい。
「腹減った〜!」と独り言にしては大きな声で言い、寝癖でボサボサの金髪を手で掻き乱して向かった先はどうやらキッチンらしい。


それから時間にして十数分が経った。
換気扇と、油跳ねの音が合わさって聞こえると共に胡麻油とニンニクの効いた香りがあたりを漂う。わたしはそれによって、互いに休日が被ると電気が時々作ってくれる炒飯を思い起こしていた。ツナ缶一個と、申し訳程度のミックスベジタブルが入った炒飯。
頃合いを見てのそのそ起き上がりながら、電気がさっき履いたスウェットパンツと一揃えになっているトップスに袖を通す。彼が着てもオーバーサイズなそれは、わたしの上半身どころかお尻辺りまでをすっぽりと覆った。
フライパンを揺する電気の背後から近づき、ゆっくりと裸の腰に腕を回してみる。広く厚い背中に顔を埋めてしまったせいでフライパンの中身は確認できなかったけど、たぶん今作っているのも炒飯だろう。

「おわ、っ!……と、あぶねぇ〜……どした?」

慌てて火と手を止めて振り返り、わたしの頭をわしゃわしゃと撫でながら問う。べつにどうしたってわけじゃないけど、答えに困ってお腹空いた、とだけ言った。

「ん、ちょっと待っててな」

電気は子供に言い含めるみたいに短い眉を下げて笑い、ちゅ、と軽くリップノイズをたてて唇を奪う。わたしの頭の上で名残惜しそうに手のひらを数回弾ませると再び背を向け、木べらの上に一口分を乗せて自らの口の中へ放り込んだ。

「よっし、今日もプロ級!」

そのでかい独り言にも間違いがないことを、わたしは既に知っている。これから彼と過ごす一日がどこまでだって幸せなことも。



20220407


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