電気が気持ちよさそうに啼くとこは可愛くて、それによってお腹の奥がじんわり熱を持つのを感じていた。だから、恥を忍んで誘うように彼の手を導いたのである。
どういうことか分かったらしい電気が、ちゃんとお礼しねーとな、と妖しく口元を歪めた。先程との表情の差でもう既にたまらない、と胸が小さく啼いた。最初から、思えばあの道具を使う提案をした時から、そのあとのことを期待してたんだと思う。


やたらと派手なベッドの上で脚を伸ばすわたしに、色々な始末を済ませた電気が跨って裸のまま迫ってくることにどきどきしながら、キスを待った。
最初は軽く、じゃれ合うみたいに何度も。それから唇が離れてゆくことがなくなって、ぬるりと間を割って入ってくる。誘うようにわたしの舌を電気のそれが掬い、なぞっていく。ぞくり、とお腹の奥がふるえた。
電気の指先が下着越しに触れたあと、湿っていることを再確認するように数度撫で、今度は直接触れるためか横から侵入してくると掠れた声が上がってしまう。

「まだ大して触られてねーのにこんなん? エッロ」
「……っ、電気が……気持ちよさそ、だったから、ッ」
「ふーん? それ見てただけで?」
「いじわる言わな、でっ」
「意地悪って。散々俺のこと虐めといて言うよねェ〜」

ぐり、と奥の窪んだ箇所を指圧されたせいでひときわ甲高く声があがり咄嗟に口元を抑えた。ここは、寮だ。大きな声を出せば、電気の隣の部屋──飯田くんや口田くんに聞こえてしまう。特に、飯田くんに聞こえてたら120%の善意と心配でこの部屋に駆け込んできてしまうかもしれない。それだけは避けたかったはずなのに、身体はどうあがいても性感を拾ってしまうし、声に出てしまう。とにかくふたりとも深い眠りについていてくれることを願うしかない。出来るだけ、喉の奥を締めるよう努めた。

「あ、っでんき……っ、ん」
「んー? どうした?」

どこまでも甘やかすような声音をつくって言ってみせるくせに、その金色の瞳は至極愉快そうにこちらを覗き込んでいる。お礼と言う大義名分を得たばかりに、ほんの少しの嗜虐心を灯らせた目。

「自分できもちいーとこ当てにいってんじゃん。これもう俺が動かさなくていいんじゃねー?」
「ああっ! それはやっ、っ」
「動かしてほしい? ……おっぱいもこんな苦しそーにして」

部屋着代わりにしていたTシャツも、ショートパンツももはや床の上だ。電気だってそうだけど、わたしの身体を覆うものはもうなにもない。
電気が片手で胸ををゆるく弄びながらかたく尖ったところを口に含み、転がしていく。電気の赤い濡れた舌が肌を這っていることが視界いっぱいに映し出されると、また新たにじわりと身体が熱を持つ。直視していられなくて困った。
いつもだったら電気ももう少しで入れたがるところだけど、1度出しているせいか流石に余裕が見られてこちらの分が悪い。

「んや、ぅ……よすぎ、っ」
「……めっちゃ俺の指締めてんね、そんなイイ?」

言いながら、親指で花芽を撫でつつ腟内を解すように動かしてくる。もう指が何本入ってるのか、とかわからない。それくらい頭が熱に浮かされるようにぼんやりとしている。電気を好きでたまらないことと、気持ちいいってこと以外なんにもわかんない。

「まっ、て、イくからっ、きもち、あ」
「うん、なまえのかわいーとこもっと見せて」
「やん、ぅう、は、〜〜っっあ、ぁん! 」

最後の最後まで気をゆるめることなく責め立てられ、ついにはベッドの上で腰が数回浮いた。
途切れた呼吸が整わないうちから、脚を抱え込む電気の腕がぼやけた視界のはしに見えて、慌てて声をあげる。

「え、待っ、……んん、〜っ!」

待ってほしくて声を上げたところで、そんなものはガン無視で奥まで電気のものが埋まっていく。ついさっきシリコン製の性具に全てを出したとは思えない堅さで腟内を穿たれて、全身を快楽がはしり身悶えした。

「……っ、やっぱなまえが1回イクと違ぇな」
「な、にが……っ」
「ちょー気持ちいいってこと」

止まってた腰が今度こそ動き出すと、ただでさえ達している最中に奥まで飲み込んでしまったそこがぎゅうぎゅうとかたちを変える。
つい羞恥で拒絶のような言動をポーズだけとってしまうけど、身体のバカ正直な反応でそれを待ち構えていたことなんて丸わかりだ。
眉の端を垂らしながら恍惚とする電気の顔をうっかり見てしまうと、そこから更に結合部を濡らしていく様な心地がした。

「もーちょい、ぁ……焦らしたほうがよかった、?」
「んん、っやだ、すぐほしい、の」
「……っ、はは、そっか。素直でカワイイね〜」

わたしを見下ろして笑う電気の首に腕をまわし、引き寄せた。
いま電気流してる? と聞きたくなるくらいの甘い痺れが全身を襲う。はしたなく開いた蜜口が欲情に震え、電気のものを食い締めていく。突き上げられる衝撃に目の前が白んで、背中にしがみついていなければ弾け飛んでいってしまいそうだった。

「んあ、んっ、また……ぁ、っああ!」
「なあに? っ、また、イきそ?」
「うん、いくからっ、電気、……キス、したい」
「サイコーにかわいい……大好き、なまえ」

ぎゅっと互いを抱き締め合いながら唇をあわせ、恋しさが胸の中を埋め尽くす。ベッドの軋む音や、耳元へ降りかかる吐息に、うわ言のように囁かれる睦言──聞こえるものすべてが、頭の中をいっぱいにしていた。わたしの限界に合わせたように、電気が遂情を迎えるそのときまでずっと。


「俺ね、さっきなまえに会いに部屋行ったのよ」
「……そなの?」
「うん。いなかったから共スペ降りてみたら、いた」

そう言いながら、脱いだ服を着直すことなく微睡むわたしの頭を電気が撫でるから、どっと眠気が襲ってくる。

「もーちょい遠慮なく来てくれたって良いんだぜー?」
「そんなふうに、みえる?」
「……だって、ほんとはもっと甘えんぼさんでしょ。なまえチャンは」

にしし、と歯を見せる電気はどこか確信を持っているようで、わたしは目を合わせられない。普段いろんな人からアホ呼ばわりされるのが常だけど、ちゃんと人のこと見てるんだよね。

「なまえはいつも、あんまし感情見えにくいけどさ。エ……ふたりのときだとやたら素直だし」

今、エッチの時って言いかけた??──と突っ込む気は眠気で失せている。

「遠慮してねぇってんなら、いいけど」

それに対しては首を横に振る。たしかに、電気に対して遠慮というか控えめに行動している節はあった。なんでも素直に行動に移す電気と、その逆なわたし。彼がそうしてくれるみたいにわたしもしたいな、と考えていることが、先程のような秘め事の際に無意識に出てしまっているのだと気がついて一気に頬へ熱が集まった。
「あれ」を使ってみようってわたしが言い出した時どこか嬉しそうだったのは、そういうことか。

「お、赤くなった」
「……がんばる…………」

それだけ言いながらわたしは手始めに眠気に任せて、電気の身体にぴったりと寄り添った。

「……電気、おやすみ」

わたしから頬にキスをしたという恥ずかしさは、彼の肩に顔を埋めてなかったことにしたい。



20211011


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