||| plus alpha どうしていつも、こうなるのだろうか。 年越しのお泊まりに誘われて、もちろん俺は部活のメンバーとの約束もあったわけだが、まさか荒北さんから誘われるとは思わないだろう。二つ返事で了承し、元の約束は日にちをずらしてもらった。 どんな年越しになるのか見当もつかなかったが、今日ぐらいは普通のデートっぽくなるんじゃないかと思っていた。その認識が甘かったことを、荒北さんの体温に包まれながら思い知る。 とはいえ、別にそういう行為が嫌なわけじゃない。俺だけを見て、俺の名前を呼び、俺のことでいっぱいになった荒北さんの顔を見るのは俺だって好きなのだ。 意識しているのかわからないが、荒北さんは最中に俺の名前をよく呼ぶ。いつもお前、とかおい、などといった呼び方ばかりで、名前を呼ぶことがそう頻繁にあるわけじゃないくせに。将来結婚したら亭主関白になるのだろうか、それとも意外に尻に引かれるのだろうか、なんて考えようとしてやめた。今のところこのポジションを誰かに譲る気なんて、ない。 荒い呼吸と生臭いにおいが残る室内に、少しだけ外の喧噪が流れ込んできた。 「…荒北さん」 「…ア?」 「もうすぐ、十二時です」 腕の中にすっぽりとおさめられているせいで、顔が全く見えない。かろうじて腕の隙間から壁にかけた時計が見えた。 目の前には荒北さんの、さきほど俺がつけた赤い跡が少し残った鎖骨がみえるだけだ。首をのばして顔を見ようとするが、少しでも動けば腰がいたい。ふざけんな、なんでせっかくの年越しに顔が見れないんだよ。 「…何してんのォ」 「なんでもないでっ…!?」 頭を掴まれて、無理矢理顔が荒北さんに向けられる。瞬間走った痛みに、思わず眉間にしわが入った。 「痛ぇの?」 「…あんたのせいでしょう…」 「アー、久しぶりだったからネ」 なんとなくばつが悪そうに言った。これでは悪態のつけようがなくなってしまう。ずるい。 からだが怠い。少しだけまぶたも重くなってきていた。 他にもいろいろ言いたいことがあったわけだが、今は黙っておこう。なにはともあれ、年越しの瞬間をこの場所で迎えられるわけだから、そこに無粋な言葉はいらない。 「…明けたネ」 「みたいですね」 ゆるゆると手を動かして裸の荒北さんの腰へと回した。 「…今年も、覚悟しといてくださいね」 「ハッ、それは俺のセリフだろ」 願わくば、ずっと。 我ながら女々しいな、と思いつつ俺は眠りの中へ落ちていった。 Dec 30, 2014 23:52 browser-back please. |