||| plus alpha

「おはよう白竜、よく眠れた?」
朝の日差しに白竜の顔が照らされ、その耳に聞きなれた、男子としては少し高めの声が響く。
「まさか」
「ごめんごめん」
不機嫌に呟くと、彼は笑って謝った。
その顔にてを伸ばす。
「白竜?…珍しいね、君が甘えるなんて」
一瞬驚きを浮かべたものの、またいつもの――まるで全てを見透かしたような、悟ったような微笑みに戻る。
「なぁ」
「ん?っわ…」
だから、その手を引っ張って押し倒す形になったのは、その微笑みを崩したくなったそんな意味もあったのかもしれない。
「白竜?」
そっと、耳を押し付ける。中央より少し左めの、そこに眠る心臓は、規則正しく脈を打っていた。
「生きてる」
「…うん」
「心臓は、動いてるのに」
その先の言葉を、白竜は言わない。
事実と認めるのが怖いのか、あるいはまだ信じられないのだろうか。何もかも。
「白竜」
「…」
「僕は生きるんだ、君の中で。さよならは悲しいけれど、お願いだから白竜、後悔だけはしないでね」
あやすように、諭すように、彼はゆっくりと言った。
「そろそろ行かないと」
俺は行く。ここを去る。
遠く、船の汽笛が鳴った。
「…」
「ん?なんて…」
「またな、シュウ」
そう言ったとき、彼は一番驚いた顔を見せた。
しばらく困ったように口を閉じていたが、しかしまた、きっとまた微笑みを浮かべて、言うのだろう。


「またね、白竜」

Jul 10, 2014 01:20
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