「ねぇ晋助、…訊いてもいい?」
「ん…何だ?」

そいつはこっそりとやってきて、質問を投げてきた。

「…両手足封じられて、身体も押さえつけられた状態って…どうやって抜け出せばいいかなぁ?」

ひとり講義室で読書に勤しんでいた俺は中断すべく栞を挟み本を閉じた。

「……また物騒な話じゃねェか」
「銀兄がね、…もっと貞操観念を持てって言うの。自分の身は自分で護るから大丈夫、って返したら…そんな状態にされて…」

銀時に組み敷かれた、と。

「ちょっと強くなったからって勘違いするなって…男に勝てるわけないって言われたの。わたし悔しくって…!」

少し目元を潤ませて、俺に身体を寄せてくる。そこいらの遊び慣れた女と違って、媚びて縋りつくような下品さは微塵もない。こいつのは清純な色気ってやつだろう。

「ね、どうしたらいいのかな…?」

ふわりと好い香りが漂って、俺の脳に刺激を与える。こいつの仕草も匂いも、何もかもが俺には毒だ。

「…んなモン簡単だ。頭を使え頭を」
「頭…?……あ!頭突きのこと?」
「首が動きゃできんだろ。…顔面も急所だ、鼻骨砕いてやれ」
「うわぁ…痛そう…」

鼻を押さえ顔をしかめる。いつの間にか、こいつは色々な表情を見せるようになった。

「それから、相手に隙ができたら更に急所を叩きゃあいい。…人体の急所はわかってんだろ?」
「はい先生、わかっております」
「まァ、男なんざ金的ひとつで身動きが取れねェからな…そこを蹴られりゃお仕舞いだ」
「…あのぉ先生、……それはやっちゃダメって言われてます…」
「ククッ…そりゃ銀時に、だろ?俺もご免こうむるが……兎に角だ、おめェに仇なす奴がいたら食らわしてやれ」
「はい、了解です!」

こうやって色気もへったくれもねェ関係だが、それでいい。

「晋助、ありがとっ」

俺は返事の代わりに軽く頭を撫でてやった。

お前そのものが俺を侵す毒だとして、その毒が全身に回っちまったら、俺はどうなるんだろうな。


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