告白翌日の朝。
万事屋はただならぬ空気に包まれていた。事務椅子に座る銀時は窓に体を向けたまま、ピリピリと物々しい気を放っている。新八と神楽はその重苦しい空間に気圧されて、ソファから身動きできず沈黙していた。
やがて、銀時が口を開く。
「新八、神楽、……俺に言うことがあんだろ」
ピクッ、呼ばれた両者は互いを見つめる。顔が、口元が引きつっていた。
もしかして、というか確実にバレている、と新八は冷や汗をかく。どうやら昨日の仕事、その依頼人がかたらだったことを銀時は知っているようだ。
『………』
ふたりの沈黙に、銀時はくるりと椅子を半回転させて正面を向く。
「おめーら、俺に黙って探り入れやがったな」
『………』
父親に叱られる子供みたいに縮こまる新八と神楽。
「……別に怒りゃしねーよ。昨日あったことを正直に話すならな…それに、事情を黙ってた俺も悪ィ…おめーらには話すべきだった…」
一瞬でピリピリとした雰囲気が、しゅん…と落ち込んでしまった。
「銀ちゃん…」
「銀さん…僕たち、悪気があって詮索してたわけじゃないんです。ただ…」
「言われなくても分かってらァ…俺だって、いつまでも沈んだままじゃいられねェ」
ハァー…、銀時は大きな溜息をひとつ吐き出す。
「…まさか、お前らに昔話なんぞを語る日がこようとはなァ…しかも、恋バナ。激レア中の激レアだよ。話すのが勿体ねーよ。つーか恥ずかしいわ、何コレ何の罰ゲームですかコノヤロー」
本気で話すのをためらっている。
「そんなに恥ずかしがらなくても…要点だけ話してもらえれば十分ですよ」
「銀ちゃんの恋バナ、聞きたいアル」
銀時は複雑な表情を浮かべ、少しの間を作る。
「………」
新八には、何よりもまず訊きたいことがあった。それは話題の核心でもある。
「…銀さん、確認してもいいですか?やっぱり…かたらさんは銀さんの…」
「ああ、間違いねーよ……間違うはずもねェ…」
自分に言い聞かせるように呟き、そしてキッパリと口にした。
「かたらは正真正銘、俺の妹だ」
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