存在


懐かしい記憶、夢を見た。



『銀兄、わたしをお嫁にもらってね。約束だよ?』

…ああ、約束する

初めて交わした兄と妹の約束。
ふたり、共に生きると決めた日。未来を約束した時。今思えば、すべてがそこから動き出したのだ…

『…ぜったい、ぜったいっ…わたしのところに…帰ってきて…!』

ああ…必ず帰る。指切りしたからな、約束は守るぜ

攘夷戦争に旅立つ別れ際、交わした言葉。
幼子のように胸に縋りつき泣くかたら。その涙を拭い、唇に口付けた時間。今でもしっかりと覚えている…



「…………」

まどろみから覚醒して、銀時は天井を見つめていた。
花見の翌朝。二日酔い特有の頭痛や気持ち悪さもなく、頭も意識もスッキリとしていた。身体は正常である。
そのかわり…胸がもやもやしていた。心のわだかまり…と言えばいいのか。

なぜ?
どうして?

そんな疑問しか出てこない。問いかける相手もいない。答えてくれる者もいない。確証がもてない。どうしていいのか分からない。
昨日見た夕色の髪…あれだけ間近で見ておきながら、その顔が思い出せなかった。視界がぼやけていた所為だろう…

「……かたら……」



それは夢か、現か、幻か…


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