湯浴みを終えて一緒に平屋まで戻ると、「俺もひとっ風呂浴びてくらぁ」と言って銀時はその足で風呂場へ引き返していった。
そして、今、かたらは自室で銀時を待っている。

静寂に包まれて自分の鼓動ばかりが音を成す。
やけに静かだと思えば、桂大隊長は不在であった。桂はかたらの代わりに若手の部下二人を引き連れて、今朝方町に下りていった。帰りは明後日になるらしい。

とりあえず気を紛らわそうと小机に向かい医学書を開いても、文字の羅列がぼやけて見え、まったく頭に入らない状態だ。
箱提灯に照らされるかたらの頬は染まり色めく。それほどに、もう銀時のことしか考えられなかった。



ガタガタッ

突然の物音に「ふあっ」と声が出て、慌てて口を押さえた。
どうやら銀時が戻ってきて、縁側の雨戸を閉めているようだ。それが終わると、隣の襖障子が開く音。自分の部屋に入って荷物の整理でもしているのだろうか。それからギシギシと畳の軋む音が床板の軋む音に変わって、足音がかたらの自室前で止んだ。

「かたら、入るぞ…」

背後で襖を開閉する音。
この空間に侵入してきた者、その気配に空気が揺れる。

「おっ、…おかえりなさい……」

かたらは振り向けずに言葉だけを絞り出す。必死に緊張を隠そうとしたが、もはや平常心など繕う余裕もなかった。

ギシ…ギシ…

ゆっくりと銀時が近づいてくる。
かたらは振り向けないまま…銀時は無言のままに…

「!……っ」

ふわっと背中から抱きしめられて、かたらの心臓がドクンと跳ね上がった。ぎゅっと、やさしく力強く、存在を確めるかのように体を密着させてくる銀時。

トクン…トクン…

銀時の鼓動が聴こえる。その存在が与えてくれる安心感、重なるぬくもりが心地よくて、少しずつ、かたらの緊張が解けていく。

「こうすると……やっと、…お前を取り戻せたような…感じがする…」

囁かれた言葉、低くかすれた声が耳を侵し、体中に響いた。

「かたら……」

耳元に切なげな吐息がかかる。
かたらはぞわりと身を震わせて息を呑んだ。

「んっ……ふ、ぁ…っ」

銀時のやわらかい口付けが耳朶から首筋へと移る。その間にも、浴衣の帯は解かれ、襟元を開かれる。
夕色の艶やかな後ろ髪を横に流し、肩からうなじへと口付けを落とす。

「っ……あ、ぁっ」

情欲を煽られ、焦らされて、かたらは弱々しい喘ぎを漏らすことしかできない。
スッと銀時の指先が小さな背中の傷跡をなぞった。

「痛い、か…?」
「い…痛く、ない…っ」

白い肌に痛々しい二本の爪痕。傷口はしっかり塞がっているが、まだ赤みが色濃く残っている。
銀時は身を屈めると、今度は舌先で傷跡をなぞっていった。

「っはぁ……っ」

思いのほかゾクゾクと快感が走る。
傷口が敏感というよりは、体の至るところすべてがきっと、銀時に触れられるだけで気持ちいいのだろう。

「…感じてる…?」
「んっ……くすぐったい、かんじ…」

銀時はふっと笑って、慈しむように愛撫を続ける。
この傷を愛していいのは俺だけで、他の誰にも許さない。触れさせたくないと思った。

今一度、かたらの背を抱き、耳元に問う。

「なぁ……お前は誰のモノ…?」
「…言わなくても…わかってる、でしょ…?」
「言わせてーから訊いてんだ…」

モノ、などと所有物扱いするのも愛情だと知っている。

「心配しなくても…私は銀兄のもの、だよ…?」
「………当たり前」

言って銀時はかたらを布団へ押し倒した。
そのまま唇を重ね、そっと、何度も角度を変えてはついばんでいく。

「ん、ふ……ぅ」
「…まぁだ、緊張してんのな……ま、久し振りだから仕方ねーか」

銀時は自分の着流しを脱いでから、半脱ぎ状態だったかたらの浴衣を取り払う。
互いに視線が彷徨ったあと交差して、先に視線を逸らしたのはかたらだった。

「……っ」

室内灯に浮かぶ銀時の肉体が、昔と比べ一際たくましくなっていた。これが肉体美というものだろう。
直視することがはばかられるほど色っぽい。その肢体に今から抱かれると思えば、恥じらいも生まれるものだ。

「んな照れることねーだろ?……こっちまで恥ずかしくなるっつーの」

一方で銀時はじっくりとかたらの体を愛でる。
三年前より成長したとはいえ、小柄であることには変わりない。でもしっかりと、女の体付きになった。

小振りだった胸はその体の割りに大きくふくらんでいる。これをさらし布で締めつけていたというから恐ろしい。さぞ苦しかったに違いない。それでも形が崩れていないのは、しなやかで引き締まった筋肉のおかげだろう。

「…お前、まだ十六だろ?…まだまだ成長する時期だよな…」

銀時は再び体を寄せて、深い口付けを落とす。
舌を絡めながら右手で胸をまさぐって、すでに突起している蕾を指の間に挟んでは擦って可愛がる。

「や、ぁん……はぁ…っ」

唇と舌先での愛撫が首、鎖骨、その下にある二つのふくらみに移っていく。
やわらかな弾力を楽しんで先端の蕾に吸いつくと、かたらがビクンと跳ねた。感度は昔と変わらないようだ。尖らせた舌先で蕾を舐ってやるだけでも軽くイッてしまうくらいの敏感さ。イジメがいがあるにもほどがある。

「ん、…だめ……あ、ぁ…あっ」
「…イクなよ?…我慢しろ…」
「やっ、…も、やめっ…ふぁ、っ」

ぴたり、と小休止。かたらの様子がどこかおかしい。

「…もう限界か?…もうイキたい?」

かたらは目尻に涙を浮かべ、ふるふると首を横に振る。

「やだっ……銀兄と一緒がいい…」
「一緒、か…」
「はやく……今すぐ、ちょうだい……もう、じらさないで…」

どうやら欲求が昂って限界らしい。早くひとつに繋がりたいと性急に望んでいる。

「急かすなって…すぐしてやるから…」

銀時はかたらの下着を剥ぎ取って両足を持ち上げた。
秘部は相変わらず小さくて、恥丘の毛も申し訳程度にしか生えていない。でも、中心はしっかりと濡れていた。

「初めてのとき、…余裕がなくて無理させちまったからな……今回はやさしくしてやる」
「…今回、だけ…?」
「さーな、お前次第だろ。良い子にしてりゃあ、やさしくするさ。…つーか、お前って激しいほうが好きっぽいけど…」
「私…銀兄なら、なんでもいい…ぜんぶ好き…」
「〜〜〜はぁー、そーいう台詞がヤバイんだって…!」
「ふっ、あ…っ?」

いつの間にか銀時の肉茎がかたらの秘部にあてがわれていた。

「はぁ……すっげーぬるぬる…準備万端じゃねーか…」
「!…はぅっ……やっ、そんなぐりぐりっしないで…っ」

ぬるりとした感触だけでも気持ちいいのに、銀時の先端がかたらの芽をいじめている。

「勝手にイクんじゃねーぞ…我慢しろ、我慢…」
「んぅ、…が、まん……あ、あっ……はぅ…んっ」

くちゅくちゅと音を立てて、芽と膣の入り口を上下する。

「は、ぁ……そーいう俺もすぐイッちまいそうだけどな…」
「…だめ、…がまん、して…っ」
「わーってるって!」
「ふあぁ…っ!」

ぐちゅっ…!

狭い入り口に先端が押し入っていく。

「くっ……これ、キツ……う…っ」

始めてのときと同じ現象だった。それもそのはず、肉体関係そのものに三年弱という空白があるのだから無理もない。

「んうっ……ふぁ…っ」

グ、グ、グ…

半ば強引に肉茎の半分を埋め込んで、そこからゆっくりと前後運動を始める。

「はぁっ、…かたら…緊張しなくていい…もっと力、抜け…っ」
「ん、…抜い、てる……はぁ、…銀にぃ…きもちいい…よ」
「きもちーけど……まだ、…奥まで入ってねーよ…?」

少しずつ、時間をかけて、閉ざされた内襞を解す。
浅い挿入を繰り返すたび、愛液がたっぷりと溢れ絡まっていく。その助けもあって次第に奥まで届くようになった。

「あ、ぁはっ……ぎんに、ので…いっぱい…っ」
「…まだっ……もう一息…っ」
「ふぁ…っあ、ぁあ…っ!」

子宮口を押し上げられて、かたらが苦しそうに息を漏らす。

「っ…全部、お前ん中に…入った……苦しい、か…?」
「…へ、いき…」
「お前ん中って…こんな、熱かったんだな…」

忘れまいと記憶した感覚も、時が経てば薄れるものだと知る。哀しいかな、己の気づかぬうちに薄れ、忘れゆくのだろう。
銀時はそんな哀感を振り払って、かたらに覆いかぶさった。

「ん、……ぎ、んにぃ…?」
「かたら……これからは、できる限りでいい……俺の傍に…」

続きは言わなくてもわかるはずだ。

ゆっくりと動きを再開して、愛を確めるようにやさしく腰を打ちつける。最奥を突くたびに、かたらは甘く切なげな嬌声をあげ、うっとりと恍惚の表情を見せている。そのしまりのない口元を唇で塞ぎ、舌を挿し入れて内部を侵す。
下も上も責められて、かたらの息が苦しくなると、銀時は口付けを耳元や首筋に移した。

手のひらで胸の蕾を擦るようにまさぐって、結合部でも芽を擦るように根元を押しつける。
かたらの内襞がぎゅうぎゅうと肉茎を締めつけてきた。

「ぎ、銀にっ……も、だめ…っ」
「はっ…奇遇、だな…俺もだ……けど、…もうちっと我慢、な…」
「ふぁっ!?」

互いに快楽の絶頂を必死に耐えてきたが、それもここまで。ならば最後にと、銀時は激しくかたらを揺さぶることにした。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、前後運動が速さを増していく。結合部のいやらしい水音が、耳元で聞く互いの喘ぎが、聴覚を通って脳を痺れさせる。ふたり折り重なり、淫らに乱れて、昇りつめる。
もう限界だった。

「ぁああっ…!」
「…ク…ッ…!」

達した瞬間のかたらの強い締めつけに、膨張した銀時のモノが熱を吐き出す。

「…ふあっ!」

びゅくん、びゅくん、と最奥に吐精すると、子宮口に刺激を受けて、かたらが二度目の絶頂。

「あっ、……あ…ぁ」

ぎゅっ、と絞られる感触に銀時はうめく。

「う、くっ……おま、…どんだけ…」
「………」

極致感に、かたらの意識がまどろんでいく。
銀時の声が遠のいて、返そうとした言葉、その声が発せられない。

そのまま、かたらは重い目蓋を閉じてしまった。


2 / 3
[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -