夜が訪れて、銀時はひとり布団の上で胡座を組む。先に風呂を頂いて今はかたらを待っている状態だ。
自分でも不思議なくらい、よくここまで冷静に普段通りを演じることができたと銀時は思う。ひとつの情念を必死に内に押し込めて、さながら二重人格者の気分を味わえた。

そんな嵐の前の静けさも、かたらに触れれば一瞬で終わるだろう。

「…全部脱げ」

かたらが部屋に入るなり銀時は低い声で言い放つ。
風呂上りで頬を蒸気させているかたらは一瞬だけ目を丸くして、次には困ったように恥らいながら浴衣の帯を解いた。ゆっくりと前を開くと室内灯に照らされて、かたらの滑らかな肌が浮かび上がる。
足元に浴衣が落ちて心もとない。でも全部脱がなければいけない。かたらは上体を屈ませて下着を脱いだ。
隠しても意味がないと思ったのか、小振りな胸も毛のない恥丘もあらわに晒している。銀時はそんなかたらを一頻り眺めて、次の言葉を発した。

「こっちに来い」

素直に来ると思ったのに、かたらはここで躊躇いを見せた。

「……どーした?怖いか、俺が…」

訊けば首を横に振る。

「いいから来い」
「…足が動かないの」
「何で?やっぱ怖えーからじゃねーの?」
「銀兄は怖くないよ……わたしは、…わたしは自分が怖いの…っ」

確かにかたらの足は竦んだように震えている。

「自分が怖い?何で?」
「……銀兄に触られたら、わたし…きっと、絶対っおかしくなっちゃう…!」

それは自我を保つ自信がないということか。銀時はフッと笑う。
結局、かたらも自分と何ら変わらない、同じ境地に立たされているのだと知る。互いに触れれば抑えていた感情がどうなるかもわからない。それを恐れているから自分が怖い。

「おかしくなったって構わねーよ…自我なんか捨てちまえ」

銀時は自らかたらを引き寄せた。

「醜いなんて思わねーから…全部さらけ出せよ」

有無を言わせず唇を奪う。

「んぅ…っ、ふっ…」

呼吸が上手くできないくらい、何度も何度も口付けをして深く舌を絡め合う。
頭の中でチカチカと何かが弾けて眩暈がする。気持ちよくて、苦しくて、でも足りなくて切ない。もっと欲しい、足りないものを埋めて欲しい。
きつく抱き合えば心音の高鳴りが感じられる。余裕なんてはものは最初からなかった。
銀時は噛みつくような勢いでかたらを愛撫していく。

「あぁっ……銀にぃ……ふぁ…っ」

細い首筋に歯を立てて吸いつくと、赤い痕が刻まれる。組み敷かれたかたらは甘い痛みに喘いだ。
ふたつのふくらみも強くまさぐられ蕾は固くなり、先端はそれぞれ舌と指で弄られる。刺激を与えられるたびに身体の芯が痺れて、目尻からは涙がこぼれた。
銀時は胸から腰へと下りて内腿にぬるりと舌を這わせる。かたらの秘部が見えるように両足を持ち上げると、中心に舌先を挿し込んだ。

「あっ…!」

くちゅっと濡れた音が響く。
銀時はそのまま卑猥な音をたてながら、入り口を丹念に責めていった。やわらかい肉襞の奥からは愛液が溢れてくる。それを舐めて啜って、舌先はかたらの一番敏感なところに移った。
芽はすでに膨らんでいる。

「ああぁ…やぁ…っ!」

軽く吸いついただけなのにかたらは跳ねた。

「…もうイッちまったのか?…お前早すぎ」
「はぁっ……だ、って…銀に、の気持ち…い…」

銀時はそこへの愛撫を続ける。強弱をつけ吸っては舌で転がして小さな芽を可愛がった。

「や、銀兄っ…い……あ、はぁっ…だめ…っ!」

再び絶頂を強いられてかたらの視界は揺らぐ。こんなに気持ちがいいのに足りないものがある。それが何かもわかっている。

「はぁ……ぎ、銀にぃの…ちょうだい…わたしのなかに…」

かたらは懇願した。ひとつに繋がれば満たされるというのなら許しを請うまでだった。
銀時は口元を拭って不敵な笑みを浮かべる。

「言われなくても」

最初からそのつもり、もう止めろと言われても止められないところまで来ているのだ。

銀時は自分の屹立したモノをかたらの秘部にあてがうと、少しずつ体重をかけて腰を沈めていった。
しかし、小さな入り口は銀時の侵入を拒んで先に進めない。

「かたら、力抜け…っ」
「んぅ……い、っ」

未熟なかたらの性器はまだ男を受け入れられる状態ではないのかもしれない。それでも繋がりたいと願い、繋げなければならないと思う。
銀時は強く押し込んでいく。

「い、…あ…っ!」
「く……我慢しろよ…」

ぐいぐいと狭い肉襞を無理矢理に押し広げ、ようやく先端が入る。予想以上にきつくて銀時は息を吐いた。
かたらの奥はぎゅっと閉じられていて、先っぽの亀頭ですら押し潰されて苦しい。早く慣らさないと互いに辛いままだろう。
銀時は一気に体重をかけた。

「ああぁ…っ!!」

肉茎に貫かれ、かたらはかすれた悲鳴を上げる。

「はぁ…動くからな…力抜いとけ…」

一旦ゆっくりと引き抜いて、再び挿入する。それを数回繰り返して、ぎちぎちの内襞を解していく。

「銀に…の、熱い…」
「お前ん中がっ熱いんだろ…くっ、だからぁ力抜けって…言ってん、だろがっ」
「やっ…あ…できっ、ない…はぁうぅ…」
「うぁ…締めんな…っ」

ねっとりと絡みつく内襞が気持ちよくて銀時は歯を食いしばる。気を抜けばすぐにでも達してしまいそうだ。
銀時はかたらの最奥、子宮口をそっと突いて動きを止める。ここを押し上げなければ自分のモノが全部埋まらない。

「あ……銀に…?」
「……かたら、…痛ぇか?」

かたらは小さく首を横に振る。弾みで瞳に溜まっていた涙が頬を伝った。

「銀兄の…好きに、して…いいよ…」
「お前……」
「ほんと、はね……寂しくて…苦しくて…死にそうなの…っ」

涙腺が切れたかのようにかたらの涙は後から後から溢れてくる。

「銀に、が…いなくなる、なんてっ………ひあっ!?」

ズンッと銀時は腰を打ちつけて言葉を遮る。

「んっ、…これで全部入った。……つーかお前さぁ、自分だけが苦しいと思ってんじゃねーぞっ」
「はうぅ…!」

ぐちゅっ、ぐちゅっ、最奥をたたくと愛液が水音になって響いた。

「死にそう?…ハッ、だったらっ…俺が、殺してっ、やんよ…っ!」
「はぁ…っ、んあっ…ぎ、んっ…やぁっ!」

繋がった部分が熱くて、摩擦で更に熱くなって、頭も身体も溶けてしまいそうになる。銀時は押し寄せる快楽に必死に耐えた。
互いに初めての性交は、ただ性欲だけをを吐き出すための行為ではなく、複雑な感情が入り乱れている。

「おめーはぁ、俺のモン…だからなっ…俺以外の、男に惚れることもっ、想うことも許さねぇ…!おめーは俺のっ、ことだけ考えてぇ…生きてりゃあ、いーんだよ…っ!」
「あっ、…い…っ」

ガクガクと揺さぶられてかたらは嬌声をあげることしかできない。

「俺がっ…いなくたって…俺のこと、想って…てめーをっ慰めりゃあ、いいだろ…っ!いまっ、繋がってる感覚っ…よぉく憶えてろよっ……く、あ…!」

限界が来て、銀時の肉茎がはち切れんばかりに膨張する。

「ふあぁ…あ…っ!?」

それと同時にかたらは自分の最奥に熱い迸りを感じた。
びゅくっ、びゅくっ、と力強く脈打って、精を注がれているのがありありとわかる。

「はあっ……はぁ……っ」

銀時は肩で息をする。額から流れた汗がぽたりとかたらの身体に落ちた。

「銀に……銀にぃは…わたしのもの…?」

訊きながら、かたらは手を上げて銀時の汗を拭う。

「ばか…当たり前だろ…っ」
「…わたしは…銀兄以外の人、好きにならないよ?…頭のなか、いつも銀兄のことばかり考えてる……愛してるのは…銀兄だけだから…」
「あぁーもう!おめーはよぉ…」

銀時は繋がったままにかたらを起こして抱き上げた。
自分の体重で深く挿さったのか、かたらは苦しそうに悩ましげに銀時を見つめる。

「銀に…もっと、して…?もっと、ちょうだい……わたしが、忘れないように…」
「言われなくてもわーってるよ……望みどおり、俺を刻みつけてやらぁ…」

愛してると素直に言えない分、銀時は口付けで愛を告げる。
甘い唾液を絡ませて存分に味わえば、かたらの内襞はきゅうっときつく銀時のモノを締めつけた。

「銀に……わたしの愛に応えて…」
「なぁに恥ずかしーこと言ってんの、かたら……まぁ、……応えてやっけどよ」

銀時はやや頬を染めて照れながら返した。それを聞いてかたらはにっこりと笑う。

「黄水仙の花言葉…それが、わたしの愛に応えて…なの」
「!?」
「ね、恥ずかしいでしょ…?」

………。

「ちょ、おまっ……俺が一番恥ずかしいわァァァ!」
「ひゃんっ!あ、あっ…銀にっ、待って…だめぇ…っ!」

ここぞというとき、大事なところでいつもかたらにしてやられる銀時。煽り煽られるのは毎度のことで、それが愛情表現だから仕方ない。
でも主導権は渡さない。
騎乗位にさせて下から突き上げると、かたらは自分を支えられなくなって倒れ込んだ。銀時は背中に腕を回して固定する。

「おめーが…気ィ失うまでっ、やらせてもらう…からな…っ」
「ふぁっ…銀にぃ…っ」

最後の夜は初夜となり、何度も何度も想いを遂げた。


2 / 3
[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -