男は度胸。
銀時はかたらの下着に手をかけた。スルスルと足首まで下げて外し、膝を立たせ開脚させた。でも影になっていて秘部がよく見えない。仕方なく銀時は下肢を持ち上げた。

「や…っ」
「嫌か?止めるか?つーかもう丸見えなんだけど」
「やめっない」
「恥ずかしいよな?…俺だって恥ずかしいっつーの」

銀時はまじまじと秘部を眺めた。
正直、女性器を見ること自体初めてだった。しかもまだ未発達であろうものだ。恥丘には毛も生えていない。

「触っても、いいか?」
「うん…」

指先でそっと縦筋をなぞる。小陰唇を左右に開くと狭い肉襞が見えた。膣穴がはっきりと見えないのはまだ処女だという証拠だろう。

「お前のここ、きれいだぜ?穢されちゃいねーよ」
「ほ、ほんと?」
「嘘言ってどーすんだよ」

銀時はふうっと秘部に息を吹きかけた。

「はぅ…っ、だめぇっ」
「何?…感じてんの?」

そんな可愛い声を聞いたら居ても立ってもいられなかった。銀時はもう一度息を吹いてかたらの秘部に舌を這わす。筋を上下に撫でれば、かたらの口からは吐息がもれた。

「は、あっ、やめっ…あんっ」
「…やべ、かわいい」

まさかこんな展開になるとは思っていなかった、故に止められない。

「あぁっ…ぎ、銀にぃ…っ」
「俺がキレイにしてやる…」

舌先で小陰唇を舐め回して、小さな突起に吸いつくと、かたらがぴくんと反応した。

「ふあっ、だめ…あっ、あぁ…っ」

突起が少しずつ硬くなって芽が覗く。そこをやさしく重点的に愛撫すると、ひくひくと肉襞が物欲しそうに動いた。かたらは初めて知る快感に悶え、銀時の髪を掴んだ。
その仕草と甘く蕩けるような喘ぎ声が、脳を刺激して堪らない。銀時はそれだけで射精してしまいそうな錯覚すら感じた。

「あっ…あぁ…あぅ…っああぁ、やあぁぁ…っ!」

かたらの足がぴんっと突っ張った。内股が震えている。絶頂を迎えた証だった。

「……気持ちいいか?」
「んうっ…ふあっ、銀にぃっだめぇ…っ」

銀時は肉襞から溢れる蜜を啜って、まだ浅い襞を舌で捏ね回して味わう。それから名残惜しく秘部から顔を離した。

「ハイ。ここまで」

そう言って笑ってみせたが、ちゃんと笑えてたかどうかわからない。銀時は理性を保つのに必死だった。なのに目の前のかたらはどうだ。

「……そんな色っぽい顔すんな。我慢できるモンもできなくなるっつーの」

恍惚した表情。まだ物足りないと言わんばかりに潤んだ目でこちらを見ている。

「銀兄……我慢しなくて…いいんだよ?」

ブチッ!
一瞬、頭の中が真っ白になった。

「ばっ!バカヤロォォォ!我慢するわァァァ!!」

なんとか堪えたが心臓がはちきれそうだ。
そんな上目遣いで、目尻に涙を溜めて、ほのかに赤く色づいた唇で、おねだりされても困るのだ。

「だめ、なの?」
「ダメに決まってんだろォ!そもそも、こんな小せーのに俺のアレが入るわけねーし!」
「やってみなくちゃ、わからないでしょ?」
「ばっ、無理だから!絶対無理!断固反対っ!」
「どうして、そんなこと言うの?」
「あっ当たり前だろ!それが大事なモンだからだよっ!」
「わかってるよ。大事だから銀兄にあげるの」

かたらはじりじりと銀時に迫って、その胸に体を密着させた。
据え膳食わぬは男の恥。そんなもの、時と場合によるものだ。銀時は動悸を抑えようと頭を掻いた。

「〜〜〜あのな、そう簡単にあげるとか言うなよ。物事には順序ってモンがあるんだ」
「わたしが…わたしが妹だからだめなの?」
「ちょ、話聞けっ!妹とかそーゆー問題じゃなくてよ」
「血は繋がってない」
「だからァ話を聞けって!繋がってるとか繋がってないとか以前に」
「銀兄、大好き」
「ばっ、おっ俺だってなァお前のこと大事だから、無理させたくねーんだよ!」
「無理じゃないっ」
「だああぁぁぁっ!何でそんなに強情なんだよっ!お前っ、おかしいぞ?」
「おかしくないっ!」
「いーや!おかしいね!」
「おかしくないよっ」

むきになってしがみついてくるかたら。銀時はその両腕を掴んで引き離した。
吐息が重なる距離で視線が交わる。
銀時の真面目な表情。瞳の赤が仄かに燃えている。それは怒っているのか、悲しんでいるのか、哀れんでいるのか、わからない。

「かたら……」

ただ、責めるような視線に堪えきれなくなって、かたらは目を逸らしてしまった。

「お前、逃げてるな」

銀時の台詞にびくっと肩が強張る。それは逃げてる自覚があるのだろう。

「俺ァ知ってるぜ。お前、昨日の話聞いてただろ」
「!………」

俯いたかたらの表情は見えない。
昨日の事件、男らを始末してかたらの元に駆けつけたとき、かたらの目尻は濡れていた。涙の痕が新しかったのを銀時は気づいていた。その涙を指で拭ったのも銀時だった。
かたらは基本、人を責めることをしない。自分が悪いと思い込んで自分の中で解決しようとする癖がある。本当に弱い部分は人には見せない、泣きつかない。
だから今回もそうだ。両親が殺された理由、原因が自分にあると、きっと自分を責めている筈だ。
ただ、いつもと違うところがあるとすれば、こうやって泣きついて縋っていること。
過去の心的外傷に加え、真実を知った痛みが心の容量を上回ってしまったのだろう。だから、その場凌ぎでいいから逃げようとしているのではないか。

「ったく、素直につらいって泣きつきゃいーのによ。…何ですかこの非常事態は。何でそんな遠回りしてんだよ。快楽や痛みで忘れたいと思ったか?」
「ちがっ」
「違わないだろ」

顔を上げたかたらは静かに涙を流していた。

「それってなァ、現実逃避のために俺を利用してることになるんだぜ?わかるか?」

身じろぐかたらに、銀時は掴む腕に力を込めた。

「…俺は今のお前は抱けない。そんな慰め方はしたくねーんだよ」
「……ごめんね……銀兄…っ」
「謝るくらいなら俺の胸で泣け。俺には弱さをみせろ。本音ぶちまけろってんだ」

言ってかたらを引き寄せて抱きしめる。

「お前の弱さも何もかも…お前のすべてを俺は受け止める。俺が受け止めてやるから、……思いっきり泣けよ」

「ぎん、にぃ……っ!」

堰を切ったようにかたらは咽び泣いた。

「それでいい」

銀時はやさしく背中をさすった。かたらの涙で胸元が濡れていく。思いきり泣けば少なからず心も晴れるものだ。気が済むまで泣けばいい。



一頻り泣いて、かたらがぽつりと語りだした。

「……わたしのせいで、お母さんもお父さんも殺された」
「何でお前のせいになるんだよ」
「わたしがいたから殺された」
「お前は何も悪くねーだろ」
「わたしなんか…生まれてこなければよかった」
「そうやって自分を責めんな」
「わたしも一緒に死ねばよかった」
「自暴自棄になるなよ。もっと自分を大切にしろ」
「……わたし…逃げてばかり…」
「逃げていいときだってあんだよ。そんときゃ俺のところに逃げてこい」
「いいの…?」
「さっき言っただろ。受け止めてやるって」
「…うん」
「いいか?俺たちは家族で、兄妹だ」
「………」
「でもな、それ以前に、唯の男と女なんだ。わかるよな?」
「…うん」
「だからよ、お前さえよかったら………」
「?……よかったら?」

急にかたらが見上げてきたので、銀時は焦った。かあっと顔が熱くなる。薄暗い部屋の中でも、顔が赤いのがわかってしまうだろう。

「〜〜〜嫁にしてやる」
「嫁…?」
「だからっ、妹から嫁に昇格してやるって言ってんだよっ」

照れ隠しで少しキレ気味に言い放つ銀時。かたらは首を傾げた。

「それって…お嫁さんにしてくれるってこと?」
「おう、俺の嫁になれってこと」
「私が銀兄のお嫁さん……本当に?」
「何だよ、イヤなのか?ちょ軽く傷つくんだけど、イヤなのかっ!?」
「い、嫌じゃないよ!…ただ、昔のこと思い出しただけなのっ」
「?何だよ昔って」
「…銀兄、前に言ってたよね。お前じゃ松陽先生の嫁にはなれないって。だから俺がお前を嫁にもらってやるって…」
「おま、よく憶えてるな…恥ずかしいだろ俺が」
「銀兄はそのときから嫁にしようと考えてたの?」
「………」

二年くらい前だろうか。銀時は頭の中に当時の光景を思い浮かべた。

『わたし、大きくなったら松陽先生のお嫁さんになりたいです』

今よりもっと幼かったかたらは先生に可愛らしい告白をした。先生は笑顔で喜んでいて、それをみて銀時はやきもちを焼いたものだ。
でも、今なら素直に言える気がする。

「……そうだな。俺はいつの間にか…お前のことが好きになってた…」

遠くを見つめる銀時をかたらはぎゅっと抱きしめた。

「銀兄、わたしはね…最初から好きだったよ。銀兄のこと」
「なっ、お前、嘘つくんじゃねーよ?初恋は先生だって言ってただろーが」
「嘘じゃないよ。ただ、初恋の人がふたりいただけなの」
「……まじでか」

正直、驚いたがそれ以上に嬉しかった。嬉しすぎてまた心臓が痛くなってきた。

「銀兄、わたしをお嫁にもらってね。約束だよ?」
「…ああ、約束する」

約束とは、けじめだ。

「人生ってモンは先が見えねーだろ。未来なんて誰にもわからねー。でもな、俺はこの約束だけは絶対守る。…だから、死にたいとか、自分なんかどうなってもいいとか、そういうのナシな。俺のために生きろとは言わねーよ。親のために精一杯生きろ。それがお前ができる唯一の親孝行だ」
「ん……ありがと…銀兄、大好きだよ」
「俺も……」

クシュッ。
かたらがくしゃみをした。そういえば裸だったことをすっかり忘れていた。

「やべっ、着替えだ着替え!」

銀時はわたわたと新しい浴衣を広げてかたらにかけた。意識してしまったのか手が覚束ない。

「銀兄、大丈夫だよ。自分で着れるから…」
「ねっ熱は!?」

額に手を当ててみると、やっぱり熱い。折角下がったのになんてことだ。銀時は項垂れた。

「大丈夫、全然平気だよ?それより、お腹すいちゃった」
「わかった!お粥だろ?待ってろ、すぐ持ってくる!」

バタバタと慌てて出ていった銀時。かたらはクスッと吹きだした。

喜怒哀楽、たった少しの時間で色々な素顔を目の当たりにした。普段、死んだ目だと詰られている銀時が、生き生きとしているのだ。そして、自分自身も生まれ変わったような感覚。
それがどういう理屈からくるのか、かたらはまだ気づくことができなかった。


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