兄と妹の約束


「では、また明日来る」
「……ああ」
「しっかりしろ、銀時」

不安を拭えない表情。桂は銀時の肩に手を置いた。

「お前が傍にいてやれば、かたらも時期に元気になる。だからそんな顔をするな。明日、かたらの好きな果物を持ってこよう。お前は何か食べたいものはあるか?まあ、ついでだからな、聞いといてやるぞ?」
「………金平糖」

玄関の外側で待っている高杉がククッと笑う声が聞こえた。
十五にもなって金平糖なんて可愛らしいものを食べるのか。まあ、銀時なら仕方ない。桂も思わずにっこりと微笑んでしまった。

「わかった、金平糖だな。承知した」

玄関先で遠ざかっていくふたつの背中を見送って、銀時は溜息をついた。



昨日の事件から一夜明け翌日。
朝方、銀時はかたらがうなされている声で目が覚めた。
額に手を当てるとひどい熱で、熱冷ましの薬を飲ませようと薬箱を開けたが、あいにく品切れだった。すっかり気が動転した銀時は看病もままならず結局、桂の家まで走ってしまった。
というのも桂の実父が内科の医者だから、何とかしてくれる筈だと思ったからだ。そしてその思惑通り、桂父は自宅まで往診に来てくれた。かたらに薬と点滴の処置を施して、病状と看病についてわかりやすく説明してくれた。

その後、桂父を見送り、銀時は桂とふたりで看病することになった。
午後になって高杉が来た頃には、かたらの熱も随分と下がっていた。熱が下がれば心配ないと医者も言っていたので、ほっと一安心。ただしばらくは薬を飲ませなければならないようだ。



先程、看病を手伝ってくれた桂と高杉が帰っていった。
時刻はまだ夕暮れ前。縁側の廊下を歩きながら空を見れば、雲行きが怪しくなっていた。どうやら夕立がきそうだ。
銀時はかたらの部屋の前で足を止め、軽く深呼吸してから障子を開けた。なるべく音を立てないように忍び足、溢さないように水桶を置いて、かたらの顔を覗き込む。まだ眠っているようだ。

額に当てた布を取り、水桶に浸してまた絞ってから顔の汗を拭う。
こまめに汗を拭いて着替えさせることが大事だと聞いた。寝間着の浴衣は汗を吸って湿っている状態だ。いいかげん着替えさせなければならないだろう。
朝はバタバタしてる間に医者の桂父が勝手に着替えさせていたから、銀時は見ていなかった。
そう、着替えさせるということは、あられもない姿というか、生まれたままの姿を目の当たりにしなければならないのだ。
銀時は生唾を飲んだ。
こんなときに不謹慎だが、思春期の男とはこういうものだろう。とにかく、かたらが眠っている間にやってしまえば問題はない。銀時は腹を括って、かたらの帯を解いた。

肌蹴た浴衣の胸元を開いて、首筋からゆっくりと布で丁寧に拭いていく。
穢れのない白く美しい裸体に脳がくらくらと目眩を起こすような感覚、じわじわと欲望が沸き起こる。気を逸らせようと鎖骨から腕を拭くが、この第一関門の双丘を越えないことには先に進めなかった。
銀時は震える手でそれに触れた。
布越しの感触でも、成長期の小振りな膨らみはやわらかいものだった。布を上下に動かすと、中心の小さな蕾がつんと存在を主張した。
それを直に手のひらで、指先で触りたい欲求。いけないとわかっているのに体が勝手に動いていた。

「ん……あっ…」

かたらの喘ぎが微かに聞こえて、銀時は我に返った。

「んぁっ…………ぎん…にい…?」

薄っすらと瞳をあけて弱々しくこちらを見上げてきた。銀時は固まって動けない。何て言い訳していいかもわからない。気まずい事この上ない。

「銀兄……っ!」

いきなり、かたらが胸に飛び込んできた。銀時の背中に細い腕を精一杯回してしがみつく。

「!?……かたら…?」
「銀兄っ……銀兄……っ」

かたらは肩を震わせながら名前を繰り返した。その姿に罪悪感と同時に愛しさが込み上がって、銀時も小さな背中をそっと抱き返す。

「かたら、すまねェ……怖かったよな、ごめん…」

銀時は数分前の自分を殴りたくなった。最低な行為だったと反省する。しかし、胸の中のかたらは首を横に振った。

「怖くない……銀兄のは全然、怖くない、よ…」

かたらの言葉が引っかかる。銀兄のは、とはどういうことか。銀時はざわりと鳥肌を立てた。

「お前……何かされたのか?…あいつらに」
「大丈夫、何も……ただ、触られただけだから…」
「本当、か?」

疑いの言葉がかたらを傷つける、わかっていても訊かずにはいられなかった。
かたらは顔を上げ目で訴えてきた。潤んだ瞳は何か別の熱を孕んでいるようにも見える。

「銀兄……体、拭いてくれる?…続き、して?確めて、いいから…」

そう言って、かたらは布団に仰向けに寝た。恥ずかしいのだろう、胸を両手で覆い隠している。
銀時は焦った。自分が疑ったばかりに、かたらがこんな行動に出てしまった。

「あのっ、かたら?わかった、信じるから!こっ、こんなことしなくても大丈夫だからっ、ねっ?」
「銀兄、お願い…」
「イヤお願いされても、ねっ?大事なところだからねっ?そう簡単に人に見せちゃダメだからねっ?」
「銀兄、わたし、ここ触られたの」

かたらは右手で恥丘の下を指した。

「すごく痛かった…怖かった……っ」
「かたら…」
「だから、銀兄に…確認してもらわなきゃ…っ」
「かたら、もういい。わかった、俺が確認してやるから…泣くのをやめろ」
「…うん」

銀時はかたらの頬に手を当てて、親指で涙を拭った。

「あー…途中で嫌になったら言えよ?止めるから」
「うん」


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