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魂の父子/母子/夏に溶ける


【魂の父子】
 前世があるらしい。私が一歳の頃から付き纏って来るこの狼は、自分を魔狼と名乗った。そして私の事を親父と呼んだ。
 親父も何も私は女だ。だが、前世が俺の父親だったのだから仕方ないだろうと返された。
「親父、良くないモノが来るぞ」
「いつも通り食らいつきなさい」
 百歳年上の息子が尻尾を振る。

【母子】
 千匹の魔物の群れの中、小さな女の子が座り込んでいたのを勇者は見た。どの魔物も皆少女を見つめて取り囲んでいた。
 生贄か、と思わず魔物を切り捨てて助けに入る。少女は倒れ伏した魔物を目で追い、勇者を見つめた。
 責めるような目つきだった。
「あたしの子に何するの」
 呆然とする勇者が食われる。

【夏に溶ける】
「一寸の虫は偉いね」
 透き通る茶の髪をなびかせ君は言う。
「五分……体の半分もある魂を抱えて生きるなんて」
 ギラギラと照りつける太陽が、君の麦わら帽子を射抜かんと輝いていた。
「私なら体半分の魂なんて重たすぎて、潰れちゃうかも」
 儚げに笑う君を陽炎が包む。
 足元では蟻の行列。蝉を運ぶ。




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