×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

うつる/家鳴り/ちょっとした気遣い/百鬼夜行のお作法


【うつる】
 Aはフォルダにある写真を全て消したという。何でも肝試しに行って以来、撮った写真が皆心霊写真になってしまうのだそうだ。
「最新の写真を全部消したんだ……そうしたら、今まで何も写っていなかった過去の画像に現れるようになって」
 頭を抱えてうずくまるAを、透けている長髪の女が覗き込んでいた。

【家鳴り】
 小鬼に群がられている。確か家鳴りという、家の柱を大勢で揺らしてギシギシ音を立てる妖怪だ。
 家鳴りは私を揺らす。
 そうだ、確か「うちは賃貸だから揺らさないで」と頼んだのだった。
 だから私を揺らしているのか。
「ギシギシ」
 試しに口で言ってみたら、家鳴り達は表情を明るくしてじゃれてきた。

【ちょっとした気遣い】
 叔母が鬼と、伯父は人魚と結婚した。なので私には鬼と人魚の従兄弟がいる。角や尾ビレを隠し、みんな人間社会に馴染もうと必死だった。
 だから私は会社を興した。
「有限会社ノーヒューマン」
 安直な名前だけれど入社希望の若者は沢山来る。
「お疲れ様です、社長」
 火の玉に言われて手を振り返した。

【百鬼夜行のお作法】
 百鬼夜行に出会ってしまった。ヤカンやウォークマンやラジオに手足が生えて歩いている。
 現代のはこんななのか、と感心して見ているとスリッパの妖怪が私の頭に被さって来た。
「伏せて伏せて」
 言われて伏せてみたら、次に来たのは夜行さん。ああ、しんがりだ。
 スリッパに守られて夜は過ぎていった。




*back × next#
しおりを挟む