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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -

魔法(うそ)/本当じゃない親なんていない


【魔法(うそ)】
 魔法が使えると君は言った。どんな魔法でも使えると。それなら僕が今日転んだのもかい? と尋ねると、得意げにそうだと頷く。
 僕の朝食がお握りだったのも? その通りと君は言う。
 僕が、君に恋したのも?
「……そ、それは、えっ、本当に?」
 偽魔法使いの顔が赤くなる。魔法じゃなくて奇跡らしい。

【本当じゃない親なんていない】
「お母さんから生まれてきたかった」
 ふて腐れて言う我が子……養子は、ランドセルを抱えて目を伏せていた。
「ごめんね。お母さんがのんびりしてたから、他の人のお腹に行っちゃったんだね」
「もっと急いでくれれば良かったのに」
 誕生日にいつも交わされる言葉。いつか血縁を越えた先を目指したい。




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