黒い苺
二股野郎と付き合っていたことがある。
私とはま逆の派手な女の子がいた。
きっと女の子の方も二股されてるなんて知らなかっただろう。
私は丁度仕事が忙しかったから、紅茶を片手にそいつを振ってやったのだけど、女の子のほうはどうだろう。
心に穴が開いていないかしら。
どうでもいいけれど。
裏切り者が付き合っていた女性は私にとって同じく裏切り者にしか見えないのだから。
けれど。
夜のお仕事をしていたその女の子が、私の知り合いと付き合いだしたと聞いたときは驚いた。
地味で、物静かで、頭はよさそうだけれど口数が少なくて、ぼーっとしている。
そんな知り合いの子が、まさか彼女を射止めるなんて。
そうね。
りんごを剥くのが上手だったものね。
私は今、誰とも付き合ってはいない。
結婚もしていない。
仕事に追われ、仕事を追いかける日々。
それでいい。
それがいい。
色恋なんて余計なものを追いかけるのは、二股野郎で懲りたから。
友達とお茶を飲みに行ったり、海外旅行に行ったり、恋人なんていなくても充分に充実した毎日よ。
ただ一つ文句があるとすれば、給料上がれってことくらい。
私は一人。
これからも一人。
違うわね。
友達にかこまれて、優雅なお一人様ね。
悪くないのよ、こういう人生も。
黒い苺
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