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フラれ方/明日へ/箱


【フラれ方】
「透明人間になりたい」
 彼女が言うので、どうしたのかと声をかけた。なんでも告白して、皆の前でフラれたのが恥ずかしかったという。
 泣きそうな彼女に私は言った。
「……演劇部の人にオペラ調で断られたら恥ずかしいだろうね」
「うん、ビブラート凄かったの」
 いい人なんだけど、と二人で頷いた。

【明日へ】
 人は絶望したり疲れたり、泣いたり笑ったりと忙しい。嫌いな相手もいる。勿論だ。
 もう嫌だ、もう嫌だと涙が溢れる時もある。死ぬ事が安らぎかのように思う時もある。
 そうして一瞬死を思い、心を休ませる必要があるのだ。特に、現代人は。
 それが分からぬ者の何と快活な事か。

【箱】
 企業戦士や授業を受けている学生が羨ましくなる事がある。彼らは自分が居るべき箱の中で、自分がするべき作業をこなせている。
 死期が近いのだろうか、祖母は盛んに今は亡き祖父を呼び、外を彷徨いた。一生懸命に呼び戻して、昼食を摂らせて一休み。
 私はどこに居るべきなのだろう。
 私の箱が欲しい。




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